継

スリの継のレビュー・感想・評価

スリ(2008年製作の映画)
5.0
変わりゆく街並みを目に焼き付けて
噛み締めるように慈しむように走る自転車 🚲 ~~~

'08年, 香港製.
本来の、剃刀のような鋭さは文字通り口内に忍ばせ
郷愁と映画的オマージュ溢れる叙情で香港を映したジョニー・トー作品。

香港の街を根城にスリを働く四人の男の物語。
いつもは黒社会で眉間に皺を寄せるトー組役者だが
本作では笑顔がこぼれる。
反対に、たいていはコメディリリーフに近い役どころのラム・シュー(大好きだ!)が、敵の用心棒的な本作では流石に物食ってる訳にはいかず、仕方なく咥えたパイプが愛らしい(笑)

四人で囲む食堂の円卓
四人で乗る自転車の戯れ
趣味の写真を撮るサイモン・ヤムの
部屋に迷い込んだ 嘴(くちばし)に紅を引いた文鳥
ファインダーに映り込んだ 唇のルージュが付いた煙草
“自由になりたい” と空を見上げる籠の鳥

首輪のようなネックレスを贈り
血を流させてはダメだとも受けとれる台詞を吐く
敵役フーは “Who”? では縛られているのは?

剃刀に光る一粒の滴(しずく)が赤く染まる
トーが込めた諦念にも似た皮肉
過ぎ去る前に、すられてしまう前に
遺しておきたかったのか
傘の花が咲く雨の交差点で すれ違うだけの無言劇
返還から十年を経た 籠の中の香港.
継