継

殺しのベストセラーの継のレビュー・感想・評価

殺しのベストセラー(1987年製作の映画)
4.9
己が遭遇した未解決事件をネタに執筆し, ベストセラー作家となった警官デニス.
アンダーカバー(潜入捜査)の現場で窮地に陥った彼は, 不意に現れた男に命を救われる.
娘にも接触を図った男は,「新作を書け, ベストセラーとなるネタを提供する…」と奇妙な, 脅迫めいた計画をデニスへ打ち明ける...

警官と殺し屋による、一風変わったバディムービー。
ラリー・コーエンってこんな脚本も書いてたんですね!
パッケージやタイトルが醸し出すイメージはパッとしません(T∀T)が、主演二人が抱える複雑な事情・関係を気の利いた演出で見せるハードボイルド。
冷酷でありながら不器用な人間臭い一面を見せる殺し屋を、ジェームズ・ウッズが怪演します!


報酬も労(ねぎら)いの言葉もなく 己を突然反故(ほご)にしたボスに, 報復の機会を窺っていた殺し屋クリーブ。
今や一流企業となりボスを権力者たらしめた会社の成功が, 強奪した金と邪魔者を消した己の功績によるものと自負するクリーブは, その屈折した承認欲求を満たすべくデニスにその内実を暴露させようと画策します。

警官と作家の二足のわらじを履き, 傍目には成功者に見えるも,
創作に行き詰まり, 妻を亡くし. 男手ひとつで育て上げた娘との暮らしは借金を抱えて, 生活は決して楽ではないデニス。
クリーブの計画を聞いて真夜中の暗がりに缶ビールを空けて思い悩み, 心配して起きてきた娘を抱き寄せ, 妻の墓前に片膝をついて花を手向(たむ)ける... 描写がいちいち良いです(^^)!

殺し屋たる凄みを見せる一方で、
老女へは紳士的な態度で接し、無邪気に手を振る子供達には柔和な笑みで応えるクリーブ。
“パートナーだから…” とデニスへ高級時計(パテック・フィリップ)を贈るもアッサリ拒否されてイジけたり(*T^T)、バーで引っかけた女と事に及ぶも機能しなかったり(T∀T)…ストーリーが進むにつれて落差の激しい演技を見せるウッズが、妙な可笑しみと悲哀を誘います。
本作は他にもカツラいじりがあったり、階段で寝てるのか死んでるのか何の説明もなく倒れてる男がいたりして、のちにジワジワくるシュールなシーンが用意されてマス、まぁ必要かどうかはアレですが(^-^; 個人的には気に入ってマス(笑)

執筆に必要と、ロスを拠点にNY~オレゴンを巡るロードムービーさながらの取材旅行。
デニスを味方にしたいクリーブの言動は一貫しているけれど, 彼の母親から“兄代わり”と慕われ, ボスが差し向ける刺客には協力して立ち向かわざるを得ないデニスは精神的に引き裂かれていきます。
ー貫くべき正義と守るべき生活.
警官としてクリーブを拒むも, その殺し屋らしからぬ人間性には惹かれ、魅力的なネタに作家としては言うまでもなく 何より娘との生活を守りたい父親として、杓子定規には拒めないデニス。。。


敵役たるボスの存在感が薄いのは主演二人の描写に時間を割きたかったからでしょうし、そこは成功してるから目をつぶるとしても、クライマックスのオチにはもう少し鋭さが欲しかったです。
書籍に由来するタイトルなんだし、例えば時計の裏に彫らせた文面 “親友クリーブからデニスへ” を伏線に使って、著書を開くと “親友デニスからクリーブへ” と献辞が書かれてたっていう終幕にしてたら、クリーブの気持ちも回収出来て良かったのにって思います(^^)
継