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タイム・オブ・ザ・ウルフのsmithmouseのレビュー・感想・評価

タイム・オブ・ザ・ウルフ(2003年製作の映画)
3.2
流石はシス側に堕ちた宮崎駿みたいな顔をしたダース・ハネケ監督( ゚д゚)。
フォースの力か鑑賞後は妙な清々しさと同時になんか気持ちが重苦しくなったゾ(´・_・`)。
ハネケ監督版「火垂るの墓」(これは高畑勲だっけな。)みたいな感じの、とうの昔に終末を迎えた世界でのたうち回りながら生きる母親と兄弟のイヤ〜な感じのサバイバル。

「明日になれば大きな車がやって来る」
なんらかの災害(疫病?)で水や食料や社会の機能の大半が失われたヨーロッパ(フランス?)。一家のリーダーだった夫が射殺されたことで妻アンヌとその子供、エヴァとベンは自転車ひとつで僅かな希望を求めて放浪する。

メイキングでの監督の「パニック映画を撮る気は無かった」との言葉通りこの映画は絶望的リアリティーでもって襲いかかってくる。
明日にはこんな感じの世界になっていてもおかしくないんじゃなかろうかと思う様な等身大感。

待てども待てども救いが訪れない世界でスクラッチカードみたいに易々と人間性が剥がれ堕ちていく様を見てるとやるせない。
警官が殺人を見逃し三振だなんてヤバすぎるよ((;゚Д゚)))。

人死より今日の食い扶持、死体からはものを盗むといった超えてはいけない一線を超える人達の中で染まりそうで染まりきれない一家の姿はその必死さもあって無茶苦茶重苦しい気持ちにさせられる。
ヒューマニティ無き世界での極僅かなヒューマニティの存在は健気なんだけど見てらんない。
いっそゾンビでも出てきてくれたら気持ち的には楽なんだけど。

この映画から感じたのは狂気=臆病、大人とそこから悲しい位影響を受けてしまう子供という構図。
無邪気に”世界の新生の為、自ら焼死する殉教者の噂”を吹聴して回る無責任な男とそんな噂を信じきってしまうベンの思い詰めてしまうくらいのイノセントさの対比がとても印象的。
汚れた汚トナの自分は臨機応変を言い訳に簡単に周囲に流されてしまいそう(−_−;)。

列車の行き先が気になる、絶望的な日常のロードムービー。
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