三畳

地獄の逃避行の三畳のレビュー・感想・評価

地獄の逃避行(1973年製作の映画)
4.4
なんでこんな風と共に去りぬみたいなジャケットなのだ?こんなシーンないよ。タイトルも「俺たちに明日はない」的なノリの翻訳かもしれないけど「地獄」はれるほどの濁音感、血生臭さ、ちっともなかったよ。静謐。クリアーで無抵抗で傍観してて。経験したことないのに既視感覚えた。

なんか「そかそか」ぐらい思った。少年犯罪、こういう感じでやってんだ。人の命なんとも思ってないんだ。サイコパスですらなく天然なんだ。

カッとなってお父さんを殺しちゃったことを皮切りに、どんどん人殺して逃げるカップル。まだまだ児童文学を朗読するみたいなトーンで、15歳の女の子のナレーションが全編挿入される。
本人の言う通り、なぜジェームズディーン似と言われる25歳男が、表面的にはぱっとしない彼女を選んだのかわからない。

でも、あわてず騒がずの貫禄、金髪のまとまりも、お嬢さんなドレスシャツ着こなす体格も、肌と同じ色の眉毛も、全てに憧れる。すごくかわいい。
なりゆき逃避行ものの女の子って、それまでの人生では全くそんな悪事に接点がないのにある日突然、秘めたる逃避行の才能が開花するように思う。私にもあればいいのに。

男もまた、上下デニム稲葉浩志みたいな恰好で、やたらに銃使いが的確で、よく喋ると思いきや何考えてるかよくわからず、めちゃくちゃかっこいい。逃げる過程の慣れた身のこなしはまぁ今思えば十中八九前科者なんだけど、重い陰背負ってる感がなくて。顔タイプじゃないのに惚れた!映画の中で男の人にときめいたのっていつぶり?

自分の中で「FRIED DRAGON FISH」と同じフォルダにしまう。特にクライマックスで浅野忠信さんに心奪われる瞬間がすごい似てた。雰囲気映画かもしれない。BAD LAND=悪地はダコタ州の痩せた土地で農業にも適さないって意味らしいけど、荒れた家庭環境だから彼女たちがこうなった的な描写はなかったし。「天国の日々」を撮ったテレンス・マリック監督、期待以上の美しい自然光。
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