グラビティボルト

リトル・ショップ・オブ・ホラーズのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

3.8
食人植物を拾った青年が餌となる人間を次々殺すホラー。
チープ。だが、この間抜けな青年が都合良く人殺しをこなせる理由が、周辺人物の狂いっぷり、他人への興味の無さに起因していて、何処か冷たく悍ましい。ラストショットの冴えよ。

抜け作な主人公の母親が「自分を不健康だと思ってずっと薬を飲む人」なんだけど、この人を見せる時に、帰宅〜フレーム外から嗄れた不気味な声〜病人だと思わせる〜明らか元気なお婆さんが寝ている。
という、魅せ方の手順を細かく踏むオーソドックスさが良い。
んで、この正体不明者の声を画面外から響かせる演出は、食人植物が
「人を食わせろ」と初めて発声するシーンでも活かされる。
まずは悩む主人公のバストショット、幾度響く声、驚いて椅子から転げ落ち、フルショットになると成長した植物が喋る!

チープ。だが丁寧。
このバランス感覚がラストまで奇妙に響く。
特に主人公の餌やり殺人が発覚すると同時に始まる警察との追いかけっこ、それまで何度も躓いて転倒していた彼がタイヤ廃棄場の凹凸や、引掛けようとする足を全て飛び越えていく様に妙な成長を感じさせてるのが奇妙。どうでも良い成長を見せてくる馬鹿馬鹿しさよ。

でも、彼が次のシーンで警察や大人の前に姿を表す時には既に・・・というデタラメな飛躍も凄い。
そうしなきゃ映画が終われないからすっ飛ばしているようなチープさ。
しかし、ホラーならこうでなくてはと納得させられてしまう。