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ラガーンのBaadのレビュー・感想・評価

ラガーン(2001年製作の映画)
4.0
公開当時は全くアンテナにひっかからず見逃したんですが、DVDの取り寄せレンタルが出来るとのことで、取り寄せてみてみました。映画祭の一本として形だけ劇場公開、DVDスルーに近かったようですね。

今となっては少し撮り方が古いかな、というきらいはありますが、丁寧に紡がれた英国植民地時代の物語。

スコアが低めなのは通してみた時点で少しピントのぼけた話のような気がしたためですが、DVDの特典映像を見て合点が行きました。
ブヴァンとゴゥリとエリザベスの三角関係の突っ込んだ物語がまるっとカットされていたのですね。この映画、オリジナルはDVDに収録されたものより長かったそうなので、多分オリジナル ではこれが本編の一部だったのでしょう。カットしたのは欧米で公開するときの観客の反発を避けるため?特典映像の部分と『インドへの道』と合わせてみるとそのへんの植民者側と植民地側の感情のすれ違いが何となくわかるような気がします(笑)。
この作品のエリザベスの描き方はちょと意地悪かもしれないと思いました。

この時代、イギリスの女性は結婚難な上、モラルの縛りもきつかった。エリザベスはブヴァンに出会わなかったら、一生恋とも友情とも無縁だったかもしれません。DVDの特典にこの映像を入れてくれたことは嬉しい配慮ですが、もしこれがイギリスで配給するためにカットされた部分なら、文化もインドとの関係性も違うのですから、日本向けにオリジナルから編集したものを持ってきてほしかったです。(この辺、Netflix配信ではどうなっているか、ちょっと気になります。)

農村が舞台ということで、踊りの振り付けが伝統舞踊に近く地味ですが、主演のグレーシー・シンさんはかなり本格的に踊っていて上手です。全体的に長くまわして撮っていますが、共演の女優さん(?)が全然踊れてなくて焦点ずらしてごまかしていたりしたのもご愛嬌。雨を喜ぶところと村祭りのダンスシーンはきちんと作ってあって見応えがありました。

DVDの本編の範囲だけでも、植民地での力関係と村落内での秩序はちんと描かれていましたが、押さえすぎてメルヘンチックに見えてしまう部分もあり、特に村のなかの人間関係は図式的すぎてあまりリアリティーが感じられませんでした。
この辺の描写の仕方は、ボリウッドというより、ふつうに映画として時計が20年以上前に戻ったような感じがします。あと、テンポがゆっくり目で映像のメリハリが今ひとつなので、イギリスの大河ドラマ映画の亜流みたいに見えてしまうのがちょっと残念です。
『きっと、うまくいく』でも、描写のテンポが時代に逆行している感じ+インド映画らしくない根無し草の雰囲気は同じだったので、これはアーミルの作風なのかもしれませんね。私はちょっと苦手です。

何はともあれ、植民地における力関係を欧米での許容範囲ぎりぎりに描ききっているところは結構すごいな、と思いました。
(2013/12/28 記)
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