ごろちん

山の焚火のごろちんのレビュー・感想・評価

山の焚火(1985年製作の映画)
4.1
アルプスの山々とそこに咲く花、岩肌の美しさに癒される気持ちと、山腹で暮らす一家の営みにハラハラする気持ちの折り合いが付かず、そわそわと落ち着かない。観終わった後も上手く気持ちを表現できない…。

何千年、何万年と同じ四季を繰り返す自然に対して、毎日同じ日課を繰り返す一家はあまりにも小さな存在。穏やかなときもあれば荒れ狂うときもある自然の姿に、人間は為されるがまま合わせることで生活を成り立たすことができる。

その自然と人間の融和が焚き火の夜の出来事。草木は春になれば芽を出し種属を絶やすまいと成長するように、人間もまた自然の法則に従って生命の維持を望む。感情の赴くままに行動する姉と弟にとって、神秘的な自然の中では必然的な行為だったのかもしれない。

そんな二人を赦すことが出来るのは、間借りして生活を営む人間たちではなく、神でもなく、山々しかないように思う。山々は何事もなかったかように一家を包み込み、変わらない四季折々の景色をこれから先も繰り返していく。
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