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ベンジャミン・バトン 数奇な人生のGreenTのレビュー・感想・評価

2.5
ブラピ版『フォレスト・ガンプ』って感じでした。

ブラピ演じるベンジャミンは、老人として生まれ赤ちゃんとして死ぬという設定だって聞いていたので、お母さんが出産時に大出血しているのを観て、でっかい老人を産んだのか!とハラハラしていたら違いました。

劇中に「どうせ人間はおむつをして死ぬのよ」ってセリフがあったんですけど、ホントそのとおりで、老人から子供に逆戻りするってことが「数奇な人生」でもなんでもない。

『フォレスト・ガンプ』だな〜って思ったのは、障害をもって生まれたベンジャミンは謙虚で、「生きているだけで丸儲け」みたいな感謝の気持ちを持っているので、ただ心の赴くままに生きているだけなのにいい人に恵まれ、満ち足りた人生を送る。

特に『フォレスト・ガンプ』だな〜って思ったのは、ベンジャミンの乗っている船が、ドイツの潜水艦を沈没させるシーン。あんなちっちゃい船が衝突したからって、沈没するかよ!とか思いながら観てました。誰でも戦争の英雄にしたがるよな〜アメリカ。

ベンジャミンが出逢う人たちがまた豪華で、捨て子のベンジャミンを育ててくれるお母さん、クイニーがタラジ・P・ヘンソン、その旦那がマハーシャラ・アリ、生涯愛し続ける女性、デイジー の子供時代がエル・ファニング、大人がケイト・ブランシェット、初めて関係を持つ女性エリザベスがティルダ・スウィントンなのですが、それぞれのエピソードがみんなつまらない!

ちなみに、デイジーはエル・ファニング、ケイト・ブランシェットの他に、思春期時代をマディセン・ベイティという女優さんが演じていて、「この人知らないな」と思って調べたら、ななななんと『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でブラピにボコボコにされる赤毛のマンソン・ガールを演じた人!こんなところでブラピと共演していたのか〜!!これこそ「数奇な人生」!!

ブラピはただ大人しいベンジャミンのキャラをなんの抑揚もなく演じているし、ケイト・ブランシェットは若い女の子から死に際のおばあさんまでを演じているのですが、この人の悪い癖というか誇張しすぎるとなんか鼻につく。ティルダは「あんまり美人じゃないのに惚れた」って役なのでイメージは合ってるけど、この人の話がとてもつまらない。

一番名演だったのはタラジ・P・ヘンソンでしたね〜。出演者みんな若いときから年取るまでを演じ分けなくちゃいけないんだけど、この人のおばあさん感が一番説得力あった。

ブラピは前半3分の2くらいたっぷりおじいさんのメイクで出ていて、途中からすげーカッコ良くなる。「ギャップ萌え」を狙ってるな〜と思った。特にデイジーとベンジャミンの年齢がシンクロする短い期間の幸せな生活は、いかにもな「美男美女の理想のカップル」って感じで、底が浅くて共感できない。

他に出てくる逆回転している時計とか、ハミングバードとかなんの意味があるの?って思っていたら、これらは、ベンジャミンの人生が逆回転しているよ、って象徴なんだって。ハミングバードは唯一後ろ向きに飛べる鳥なんだそうで。

しかし、ベンジャミンの人生が逆行しているってことは明確な前提なんだから、それを示唆する小道具が出てきたところでなんの意味もない。あ、あと、お父さんがボタン屋ってのはなんか意味があるのだろうか?映画のオープニングにたくさんボタンが出てくるので、なんかこれがさもなんかの伏線に見えるんだけど、特に意味はないらしい。

ベンジャミンの名字は “Button” だから、邦訳は「ボタン」でいいのに、なぜか「バトン」になっている。まあ、発音をそのままカタカナにしたら「バトン」なので、日本語で「ボタン」としていたのがそもそもおかしいのだが、そうするとお父さんがボタン屋なのが全く意味をなさない。だけど、ボタン屋であることが劇中でなんの伏線にもなっていないので、結局はどーでもいいという、何重にも「?」な設定(笑)

ベンジャミンが老人から若者に逆行していくって設定が、物語になんの深みも与えていないのが本当に気になる。子供の頃、老人の身体で他の子と遊べないっていうのも、障害があって歩けない人とかの悩みと変わらないくて、「身体が老いているから」という特殊な状況に対する「なるほど〜!」がない。子供のデイジーが、老人にしか見えないベンジャミンに「あなたは本当は若いと思った」って言うんだけど、何がそう思わせたのかもわからない。

「デイジーと一緒に年を取って行けない悲しみ」というのがあったけど、途中でベンジャミンが去っていってしまうので、それも「?」。あれがずっと一緒にいて、娘が大きくなるのに自分は小さくなるって言うのを目の当たりにするんならアレだけど、そこは描かない。一番重要な、「なるほど〜!」なところは、描くのが面倒くさいから避けている感じ。

ベンジャミンが死ぬ時も、子供が老人の痴呆症みたいな症状を持っているんだけど、「子供の身体に押し込められた老人の葛藤」みたいなものがあるわけではない。

ちなみに「若返りCG」は、 『アイリッシュマン』や『ジェミニマン』と同じで、やっぱ不自然!って感じがした。

最後はネタバレになると申し訳ないので、コメント欄で!
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