昼行灯

血を吸うカメラの昼行灯のレビュー・感想・評価

血を吸うカメラ(1960年製作の映画)
3.6
視点ショットであるということがカメラのフレームが映像に挿入されていることで、同じく視点ショットの特徴的なめまいよりもわかりやすくなる。
題名や精神科医との話ほど窃視症は問題になってないのかなと思う。視点ショットは多いけども、見られる対象にカメラの存在は理解されている。むしろマークが興奮していたのは、見られる対象をフィルムに記録することで、所有したような気分になる点だったのでは。フィルムを継ぎ接ぎして、自分自身の思うままの物語へと作り替えること。それは幼少期を父の研究材料として、自分の生を所有する権利を剥奪された彼の歪んだトラウマ療法でもあったのでは。被写体の怖がる顔に固執していたことからも、自分の強制されていた恐怖を他者にやってもらうことで、その責任から逃れようとしていたのかなと。

ヒロインに対しては撮影を拒んだところがちょっと意外だった。マークは性と愛を分けて考えているのかな。とは言うものの、そもそも性的興奮の描写がなく、マークは性的に興奮するの?というレベルではある。弱まっているとはいえヘイズコードを意識していたのかもしれない。あと口唇裂の人が出てきたのにはびっくりしたが、障害がホラーのスペクタクルになっている感じがややありあまりいい気分ではないな。

あとめまいと同じ女性の目のeclが冒頭で真っ赤に映されてる。
音響的にはマークの家にいる時は階下の音が聞こえてくるのに、1階の家にいる時はマークの音は全く聞こえないのが面白かった。
それとカラー照明や服、カバンなど色彩が結構鮮やかなのに、変にコントラストが強く影が多いので不気味な画面だった。
昼行灯

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