ナガノヤスユ記

サボタージュのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

サボタージュ(1936年製作の映画)
3.8
修士卒論書いてた時期以来の鑑賞。あの頃は寝ても覚めてもヒッチコック漬けの日々だった。

警察も物語も物事の黒幕に迫っていく気がまるで無いという不条理サスペンス。76分の尺において結局は小市民ばかりが犠牲になり、キャラクターはおろか観客にさえも真実はほとんど見えないまま終わる。サスペンスと聞いて映画館にコレを観に行った当時の観客は怒らなかったのだろうか。だとしたら皆さん懐が深い。
首尾よく隣の果物屋に密偵まで放っておいて、それ以降はまるで無能な刑事ども、ヒッチコックは内心くそバカにしてると思う。爆弾の取り扱いにしろ、ナイフの見せ方にしろ、とにかくフザけまくってる。もちろんただの悪戯ではなく、感情の変遷にきれいに乗せてるから物語がぎりぎり破綻せずにいられるのだけど。

ただのお利口さんではいられないヒッチコックの枠の外し方、数年後のハリウッド行きを予感させるかのような英国期の一作。