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ミュンヘンのmendeのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
4.4
私の好きなスピルバーグ映画ベスト5は『ミュンヘン』『プライベート・ライアン』『ジョーズ』『ペンタゴン・ペーパーズ』『ブリッジ・オブ・スパイ』(なのだけど時々変わる。『ET』もかわいいから好き)。
多くの人が心を痛めているイスラエルのガザ攻撃。最初に仕掛けたのはハマスだがその報復は度を超えていると思う。
この映画はミュンヘンオリンピック事件というPLO(パレスチナ側)の非道なテロに対し、モサド(イスラエル側)が報復する事件を描いている。
どういう描き方なのか、もう一度見直してみようと思った。

主人公はモサドの報復作戦のリーダーに据えられたアブナー(エリック・バナ)。
報復といってもオリンピック事件の実行犯ではない。生き残った実行犯たちは逮捕されている。パレスチナ側の組織の幹部を狙っている。
そもそもそれは「報復」なのかという気がするが、ひとりひとりターゲットを殺していく。
主人公たちは次第に人を殺すことに慣れ、手段を選ばなくなる。その過程でこのやり方はユダヤ人として教えられてきた高潔さに反するといって離脱するメンバーもいる。PLO側にも存在が知られ殺されるメンバーもいる。精神的に追い詰められるメンバーもいる。
偶然、顔を合わせたPLOのメンバーが「我々を(こうするように)追い込んだのはイスラエル側だ」と言う。これにどう反論できるだろう。
この映画に対してイスラエルからは批判が多かったそうだが、映画が訴える殺し合うことの不毛さは強烈だ。
よくユダヤ系のスピルバーグがここまで踏み込んだ作品を作ったなと思った。

ただ、この映画を見直した翌日にCNNのニュースでスピルバーグがコメント出したと伝えられた。「私が生きている間に、ユダヤ人に対するこれほど筆舌に尽くし難い蛮行を目にするとは想像もしなかった」と。私は彼のコメントのユダヤ人の部分をイスラエル人に変えたものとそっくり同じ感想を持っている。スピルバーグはこの映画に対してどう思っているのだろう。ただ精神的に追い込まれた気の毒な主人公(イスラエル人)として映画を作ったのだろうか。
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