次男

マイネーム・イズ・ハーンの次男のレビュー・感想・評価

マイネーム・イズ・ハーン(2010年製作の映画)
4.1
(歌ったり踊ったりはないけれど、)すごくインド映画らしい映画でした。インド映画の素敵なところと乱暴なところが象徴的に混在してる、インド映画らしいインド映画。「良い話でしょー!」なんつって、嫌味とか下心とかもなく、すごく堂々と見せる。そのスタンスがインド的だなあと。

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ハーンの人柄がすごく素敵で、そんな彼の恋心はすごく応援できて。竹を割ったようなカラッとしたヒロインも素敵だし、(多少強引な運びだったけど)「見たことない景色を見せる」という恋人の課題もすごく素敵。なにかでパクりたい。

中盤の不幸はかなり落ち込むし、そこからの様々はーーとになくポイントとポイントの間の途中描写が少ないから気持ちの変遷に戸惑うし繋ぎがすごく雑だけどーーエピソードの力ありすぎてひたすら泣かされる。まじでパワー系ドラマ。

インド映画的大団円な終盤は、もうなんか細けえことはいいから泣こうぜ!!って感じすね。今でこそ下記ブツブツ書いてるけど、ぐじゅぐじゅに泣いてるもんね。観てるときは。

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インド映画的、と触れたことについて、敢えてすごく嫌な書き方をしてみます。

客観性に欠けるというか、自分がなにより正しいと思っている感じというか。ひとつのテーマには多面的な見方が必ずあるのに、ドラマを味方につけて感情に直接訴えて、それも力任せなグイ押しで。A地点からB地点に行くとき、その自然な物語のフロウには時間をかけず、A地点とB地点をとにかく強くドラマにする。ドラマ目白押しのグイ押し。

2時間半、すごく良い話が連なっていたし、ぽろぽろと泣いてしまうのだけど、反面で暴力的な強引さも感じるんだよなあ。

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敢えて嫌な書き方をしてみたのは、「そうは思ったけど、それでいいのではないか」と思ったから。

観た直後はすごく泣いていて、でも泣き止んだ時に上記みたいなことを思って、でもすこし時間経ったら、「そうは思ったけどあれでいいのでは」って一周回って肯定してきた。
もしかしたら、ちょっと気使い過ぎだよね、たぶん。創作において、丁寧さとか、普遍性みたいなのに。「ズブズブに好きなひとを作ること」より「誰が見ても害がないこと」に執心してるのかも。感性自体が。この一億総クレーマー時代に浸かり過ぎてる感性になってるのかもしれない。もっと独善的でエゴイスティックでもいいのかもしんないよねー。

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「マイ・ネーム・イズ・ハーン」のあとに続く劇中の言葉を思い出すと、ング…って込み上げるものがあります。言いたいことが真っ直ぐ明確だった証拠だし、少なくとも僕はその言葉をたぶんずっと忘れないし、上記悶々としたけど、やっぱりとっっても良い映画だったんだと思います。
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