こたつむり

タトゥーのこたつむりのレビュー・感想・評価

タトゥー(2001年製作の映画)
3.0
♪ “サヨナラ…” 魔性の人
  夢想の誓い 悪夢の神秘 愛の幻想

『ちいさな独裁者』を仕上げたロベルト・シュヴェンケ監督のデビュー作…ということで鑑賞しましたが…うーん。これはかなり問題作。どのように取り扱えば良いのか…悩みますね。

ジャンルとしては陰鬱なサスペンス。
冒頭からして「全裸で逃げる女性。その背中はゴソリと削られ、血と肉が見えていた。そんな彼女を一瞬にして吹き飛ばすバス。彼女は炎に包まれていく…」という展開ですからね。とても硬質な物語なのです。

でもねえ。何かが足りないのですよねえ。
そもそも、カメラワークで次の展開が読めますからね。なかなか緊迫感が醸成しません。腹の底に響く効果音は雰囲気づくりに貢献しているのですが。

やはり、サスペンスは意表を突くことが大切。
「何が出るかな、何が出るかな」とサイコロを振るような気分で物語を進めてもらいたいのです(但し、どのサイコロを使うかは提示が必要。誤認は良いけどすり替えは紳士的ではありません)。

そして、本作が問題なのは終盤の展開。
それまでサイコロを振らずに進めていたのに、種類を告知せずに(6面体なのか8面体なのかも分からない)振った上で、その出目を教えてくれない…という暴挙に出るのです。えー。

だから、評価に困るのですよ。
これは必要な演出なのか、それとも苦肉の策なのか。正直なところ、後者である可能性も否めないと思うのです(その場合だと予算とかスケジュールの都合でバッサリと切り捨てた…と考えられます)。

出目が分かれば判断できるんですけどね。
物語としては、エンドクレジットに挟まれた映像を観れば、次の一手は予想できますが…はたして監督さんはどう考えていたのでしょう…。うー。消化不良ですん。

まあ、そんなわけで。
エロとグロと陰影の強い映像で公開当時(2001年)に話題になったそうですが、ロベルト・シュヴェンケ監督の本領発揮にはほど遠い物語。僕が思うに、監督さんの持ち味は“ふんわりとした毒素”。それを感じないほどに隠滅な世界観は毒素の無駄遣いなのです。
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