この映画で描いている人たちは、いかなる信仰も、いかなる政治的確信も持っていない。ほとんどの人間がそういった人々なのだ。彼らは時流に流されていき、ある日突然周りから圧力を受けて驚くのだ。――イングマール・ベルイマン
島で平和に暮らしていた夫婦が、戦争の勃発で暮らしを破壊され逃走を余儀なくされる。否応なしに迫りくる死の恐怖は二人のエゴイズムを剥き出しにしていく。。。
1968年制作(Filmarks表記は誤り)。前作「狼の時刻」(1967)から翌年の「沈黙の島」(1969)まで、リヴ・ウルマンとマックス・フォン・シドーが島の夫婦を演ずる”見えざる悪”三部作。演技とカメラワーク、鳴り響く大砲や銃撃の音だけで、戦争状況を見事に描き出している。サバイバルタッチで最後まで面白いが、鑑賞後に残るのは絶望的な気分。同時代のベトナム戦争と直接的に呼応したベルイマン流の反戦的な一本。