rage30

重量★ガールズ キングコングを持ち上げろ!のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

女子重量挙げチームの成長を描いた、スポ根映画。

映画の序盤は「あ~挫折した元選手がコーチとして再起する話ね」「はいはい、落ちこぼれな生徒達の成長物語ね」…という感じで、完全にジャンル映画として舐めて見ていたんですよ。
画面の色彩もセピア調で薄暗いし、なかなか生徒達が本気で練習しないので、前半はかなり重苦しい印象を受けました。

ところが、後半の大会に初出場する辺りから、グッと引き込まれたというか。
ウンコを漏らす件には爆笑しつつも、試合に負けた部員達が夜な夜な合宿所に集まるのも良いし、コーチが真剣に重量挙げを教えなかった理由も彼なりの優しさであったと。
実は誰よりも重量挙げに傷つけられたのがコーチだったんですね。
だからこそ、同じく重量挙げによって傷つけられた部員達と同志になり得たのかもしれません。

「重量挙げなんて何の役に立たないけど、それでもやるか?」と問う辺りは、「でも、やるんだよ」の精神を久しぶりに思い出しました。
「するか?しないか?で、“する”を選んだ勇気ある女達の物語」と言い換えても良いでしょう。
そして、この精神が終盤の「人生の金メダルとは?」という映画全体のテーマにも連なっていきます。

そこからの特訓シーンは当然ながらアガらざるを得ないし、「明日お前達が上げる重さは、今まで背負って生きてきた人生の重さより、はるかに軽いものだ」というコーチの名台詞も飛び出して、いざ大会へ。

ここでの重量挙げというスポーツの見せ方が本当に上手い。
我慢して我慢して~耐えて耐えて~からの一気に解放されるカタルシス!
女優さん達の演技も迫真で素晴らしいのですが、重量挙げというスポーツがこんなにもエモーショナルなスポーツだったとは驚かされました。
自分の為ではなく、大切な人の為なら、本当にどこまでも力が出せそうな気にさせられましたからね。

もうここまで来ると、コーチにも部員達にも、両者の関係性にも感情移入度が120%を超えた状態になってしまっているので、何をされても涙腺が刺激され大洪水状態へ。
いやね、あんな体罰をしまくるコーチなんかいないと思うし、コーチが死ぬ件だって、お涙頂戴だな~とは思うんですよ。
でも、もうこっちはもう洪水ですから!防波堤なんかとっくに壊れてますから!ってな感じで、抗うすべもなく、ひたすら泣き狂っていました…。

個人的にはコーチの成長も、きちんと描いているのが良いなと思ってて。
コーチとしての知識やスキルだけでなく、人間的にも彼女達の成長を見守る事で救われていく過程が描かれている。
序盤で「銅メダルなんて役に立たない」と言っていた男だからこそ、ラストの「人生で大切なのは結果じゃない。どんな時も諦めずに最後までベストを尽くす事だ」という台詞には、より感動するものがありました。

ここまで泣きに特化されると、映画として評価して良いのか困るところですが、とにかく泣きたい人にはオススメの作品かなと。
世間的には、まったく知れていない様なので本当に勿体ない。
知られざる名作として、これから推していきたい作品です。
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