オレオレ

マイ・ライフ、マイ・ファミリーのオレオレのレビュー・感想・評価

4.0
まず、原題「The Savages」にぎょっとする。「サベージ一家」という意味なんだが、savage=野蛮、未開、みたいなネガティブな意味があるので、てっきりモラルのない人々の話かと思ってた。
日本語だと、「B-26号ベッドのヤバン一家ですが」って言うのに、だれもぎょっとしない、(笑)。

ジョン(P.S.ホフマン)とウェンディ(L.リニー)は40歳前後の兄妹で、それぞれが独身。ジョンこそ教授だか講師だかとして大学で教えている定職はあるが(といっても、tenure(終身在職権)がない教師は常にクビの恐怖あり)、ウェンディはモノにならない脚本を書きながらバイトをしつつNYCに暮らしている。住んでいるアパートもボロボロで、ベッドを置くスペースもないくらい狭い。

そんな二人のところに、アリゾナにガールフレンドと住んでいた父親レニーを引き取れ、と連絡が来る。このガールフレンドとやらが亡くなったので、その親族がレニーを追い出しにかかったのだ。

認知症を発症しているらしいレニーをNY州の老人ホームに入れることにした二人。ジョンが見つけてきた、空きのあるホームは中の下ランクで、罪悪感からもう少し上のランクのホームを探してくるウェンディ。
そんなウェンディにジョンは、「ホームはホーム。上ランクのホームなんて、入れる側の罪悪感に付け込んだビジネスだ」と言い放つ。・・・ドライ、だが一理あるかも。

中の下だか中の上だか知らんが、よくホームに空きがあったよなあ!ってのがびっくり。日本だと、めちゃくちゃ順番待ちだってよく聞くけど、アメリカの施設は探せばなんとかなるもんなのかな・・・
あと、この二人が全然お金の話をしないのがちょっとひっかかった。
ウェンディはバイト生活、ジョンも生活に困ってはいないだろうが、余裕があるようには見えない・・・。まあ、あんまりその辺リアルに追及すると、2時間じゃ足りないし焦点がぶれるんだろうが・・・。

ドラマチックな展開のないストーリーなので、出演者の演技が光る。
主役の二人はもちろん、ウェンディの不倫相手のおっさん、ホームのナース、ジミーなど、脚本がいいのもあってみんな印象的。
テニスをして首を痛めるジョンのエピソードや、兄にさえ見栄を張り、「グッゲンハイムから助成金をもらった」というすぐバレる嘘をつくウェンディなど、ストーリーと直接的に関係のない部分も光っている。

あんまり期待してなかったのに意外と佳作、と思って調べたら、この監督は私の好きな「プライベート・ライフ」と同じ人だった!
「プライベート・・・」も、キャスト(キャサリーン・ハンとポール・ジアマッティ)や脚本がよくて好きな小品。どっかで探して、久しぶりに再鑑賞しようっと。