彦次郎

イングロリアス・バスターズの彦次郎のレビュー・感想・評価

3.9
時代は第二次世界大戦、舞台はドイツ国防軍占領下のフランス。家族を皆殺しにされたユダヤ系フランス人女性映画館館主ショシャナとユダヤ系アメリカ人秘密部隊を率いるアメリカ陸軍中尉レインの2人をメインにドイツ指導者打倒しようとする戦争映画。
クエンティ・タランティーノ監督が10年以上脚本に時間をかけた作品です。敢えて史実から離れた大胆さに驚きました。
長いので章ごとを簡単に説明すると
第1章『その昔…ナチ占領下のフランスで』
ナチス親衛隊ランダ大佐と彼に殺された家の生き残りショシャナの因縁。
第2章『名誉なき野郎ども』
ハーケンクロイツの刻印を敵方に残す秘密特殊部隊の活躍。
第3章『パリにおけるドイツの宵』
映画館主となったショシャナがドイツ軍狙撃手の英雄フレデリックに恋されプロバガンダ映画上映から復讐の機会を得る。
第4章『映画館作戦』
レイン側も映画館での爆破計画を進行。バーで女優ブリジットとバスターズがゲシュタポの少佐と同席したことから修羅場と化す。
第5章『巨大な顔の逆襲』
各人の思惑が映画館で交錯して凄絶な結果となる。
といった流れです。
上映時間は長いですがメリハリが効いてあり退屈はしません。
話の意外性も良いのですが何といってもハンス・ランダ親衛隊大佐の存在が欠かせません。優しそうな言葉とともに冷徹に皆殺しの決断をくだし猟犬のように言葉と観察で相手を追い詰めていく様はユダヤ・ハンターの渾名に相応しい悪党ぶりです。冷静に見えてもいきなり感情を爆発させ殺すところはかなり怖いですし、国と仕事に忠実なようで心底は自分中心の売国奴というところが現実味がありすぎます。この悪党がいたからこその最後の爽快感に繋がるわけです。
もう1人忘れがたいのが英雄フレデリック。こいつも表の顔は素敵ですが最後に本性を現すあたりがまさにタランティーノ風です。
テレビシリーズものとして考えていたタランティーノに「次の映画まで5年かかる」とリュック・ベッソンが喝を入れてくれたおかげで痛快エンターテイメントが生まれたことに感謝です
彦次郎

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