彦次郎

87分の1の人生の彦次郎のレビュー・感想・評価

87分の1の人生(2023年製作の映画)
4.0
注意一秒事故一生。
婚約者ネイサンとラブラブでご機嫌なミュージシャン志望アリソンが婚約パーティーの翌日の運転中にネイサンの家族を殺してしまい自身の体と心に大きな傷を負うもネイサンの父親ダニエル(将来の義父)と孫のライアンと葛藤しながらも人生を歩んでいくドラマ。原題は『A Good Person』で良い人とか善良な人とかいう意味のようですが本作を観ると邦題の方が相応しく感じました。
アリソンがオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の常習者となり冒頭での輝きが全て失われ自暴自棄に堕ちていく姿は痛々しいですがダニエルやライアンと時には喧嘩しながらも対話していくことで自分の「罪」を受け入れていく過程が丁寧に描かれていて心に染み入ります。
吹き替えでの視聴だったせいかアリソンの元々の性格もこんな感じだったのではと勘ぐってしまいますがダニエルはアルコール障害、ライアンは対人関係のトラブルからかSNSを使ってご性交(アリソン曰くこの年代では当然とのこと)されるといった個性を持っているので違和感もありませんでした。話の展開はベタともいえますが心の傷というかオピオイドの件やお互いのわだかまりも順調に解消されていくのではなく紆余曲折あるのがリアリティで説得力がありました。個人的には無駄な音楽が入らず物語に没入できたことやエンディング曲の優しさが良かったと思います。
フローレンス・ピューの演技が素晴らしかったのですが髪を切ったり歌を披露したりと力の入れようが窺えます。当時は監督のザック・ブラフ氏と交際していた(2024年時点では終了)とのこと。監督は彼女を想定し作り彼女はアイデアというか意向を反映させたというお互いがプラスに働いた作品といえましょう。
どういう事情かアマゾンプライム配信でしか鑑賞できないようですが人間ドラマの逸品。

余談。
お勧めされてから鑑賞するまで時間がかかってしまいました。その間に身内が亡くなったことで本作を鑑賞した後に感じ方に以前の自分とは変化があったようにも思えます。そういった意味でも記憶に残りそうな作品です。
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