彦次郎

ミッドサマーの彦次郎のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.8
スウェーデンはホルガ村の夏至祭に参加したアメリカ大学生グループが村人たちのカルト的信仰に巻き込まれる恐怖を描いた鬱型ホラー。
さて本作ですが、ホラーといえば闇夜にモンスターというのが定番ですが自然豊かなで1日中陽が沈まない村で穏やかな白装束の人々という多分従来のホラーに対するアンチテーゼのような設定になっています。というか宗教の暗部を描いている点についてはホラーの領域を超えて一種のドキュメンタリーになっているように思えました。
主人公である大学生のダニーは双極性障害である妹が両親と無理心中して心的外傷負い、恋人であるクリスチャンは別れたくても別れらない(メンバーの人たちは別れるよう勧めている)という関係にありラストに至る経緯に説得力があるのが特徴。寛容にみえる村、外部から人間を連れてくる留学生ペレといいカルト集団にみられる要素とは別に近親婚により外貌が崩れた人間を登場させるのもなかなかエグイ演出といえましょう。
個人的に本作で1番特徴的なのはやはり髭面彼氏クリスチャン。別れたいとはいえ彼女に内緒でスウェーデンに行こうとしたり、考えもなしに村に来たくせにホルガ村独特の風習を論文にしようとして友人ジョシュと揉めたりする問題人物で終盤の展開も「まあコイツなら流れのままにそうするよな」と思っていたらその通りでした。現実にもいそうな人で監督の鋭い人間観察が窺えた次第。

余談。
棄老の儀式は本作でも恐らくトップクラスに衝撃的な絵面でしたが実はモデルは日本にあるという説があります。いわゆる姥捨て山でフィクションでは『楢山節考』が有名。臭いモノには蓋をするでもありませんが人知れず捨ててしまう日本と大勢の前で公開して区切りとするスウェーデンの考え方の違いが興味深かったです。
彦次郎

彦次郎