ドント

ノーマッズのドントのレビュー・感想・評価

ノーマッズ(1985年製作の映画)
4.2
 1985年。これはものすごく面白い。ものすごく面白い。2回書くくらい。病院で働く女性医師、ある夜担ぎ込まれた男は傷だらけでフランス語をわめき立て手に負えない。落ち着かせようと近づいた彼女の耳元に男は何かを囁き、こと切れる。その直後から彼女は幻覚を見るように……
「死者の記憶が再生される」というホラーでありファンタジーで、暴力映画でありスリラーで悲しきドラマでもある。ちぃと荒っぽい箇所もあるけどこのボーダレスぶりは素晴らしく、またどの要素も美味く料理されている。オバケ(仮)がいかにもオバケじゃなくこんな格好で、街で騒いでみたりヌッと現れてみたり、かと思ったら物理で襲ってきたり「KILL」だの「SEX」だのバカの落書きを残していく。しかしそれゆえ二倍怖く、二重に恐ろしい。人間の理屈では割り切れない輩どもゆえに。
 皿に盛られてる具材だけ見ると変な料理だけど、細かいことは抜きにして口に運ぶと旨い作品なのだ。本作の監督はこれがデビュー作とは感じないくらいに撮影や演出も堂に入っていて素晴らしいシーン、ショットが幾つもあり、ちんまりした内容でありながら奥行きと幅を感じる。全編に退屈な時間がない。廃屋に尼僧が現れるシーンなんか相当に恐ろしく痺れたし、妻の前で主人公と旦那が瞬間的に入れ替わるシーンとか超すごい。
 実は監督はジョン・マクティアナン。ミリタリーアクションから狩られるホラーへと移行する『プレデター』、全方位に完璧な脚本を完璧に仕上げた『ダイ・ハード』などを撮るのは必然であったろうと思わせる一本だった。結果論的だけどこの2本(+α)を撮った男のデビュー作ならこのくらい面白くて当たり前だ。なお007になる前のピアース・ブロスナンがW主演的に出ており全裸になったりする。
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