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カラオケ行こ!のドントのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.5
 2024年。よかった。ちょっとだけ泣いた。合唱部部長としてがんばる中学3年生の岡くん、ある日のコンクールの直後、どう見てもカタギではない男にほぼ無理矢理連れてこられたのは……カラオケ店! 狂児を名乗るヤクザは岡くんに「歌、教えてくれへん?」と頼み込むのであった!
 和山やまの原作は既読(大好き)、ファンタジー極道と青少年の、オフビートでエモい愛と青春の物語を映画化するのに、山下敦弘監督はベストチョイスだったと思う。一本間違えば寒々しく悲惨な作品になるところをいつもの調子で絶妙なバランスをとって、時折「ん?」という箇所もあるけれど、うまくやっている。
 脚本(脚色)もまぁ見事で、マンガならギリですり抜けられる「学校や部活はどうなっとるんや?」という部分的を丁寧に肉付けし、独白の多い原作を広げて伸ばすことで、青春というひとときの幻のような輝きを封じ込めることに成功している。これは岡くん役の齋藤潤がよかったためでもあるだろうが、後輩の彼の熱血ながむしゃらさ、副部長の器のデカさ、本音を語れる映画部の存在という足した部分が生きているからだと思う。キャグニーの『白熱』を観る15歳!
 一方でその脚本が、ちょっとこう、ワガママな言い方になるけれど「わかりやすく」なりすぎている。たとえばラストのカラオケシーン。歌ってるのと聞いてるのを交互に見せるだけで十二分に伝わるし泣けるのに、回想も挟まっちゃう。このへんもう少し余白というか、思春期なりのゴチャついた感情、気持ちをそのまま美しくお出しするような感じであってほしかった気もする。
 そんなことも考えつつ、あと「手の平ガードと声が枯れるシーンはないのか……」と原作ファンとしてちらと思ったりもしたけれど、大変に丁寧な仕事ぶりの映画であったと思う。ヤクザ役に本職(※Vシネのヤクザ系の常連俳優、という意味です)を並べているのがまた丁寧でよかった。泣けたのは最後のカラオケと、映画部の奴の最後の台詞とショットです。
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