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宮廷画家ゴヤは見たのGreenTのレビュー・感想・評価

宮廷画家ゴヤは見た(2006年製作の映画)
3.0
ズタボロのナタリー・ポートマンが衝撃すぎて、ゴヤを演じるのがステラン・スカルスガルドだったなんて完全に忘れてました。

ゴヤって、こういう画家だったんだ、って思いました。スペイン国王、王妃の肖像画を描いたりもするけど、街中で起こっていることをスケッチして版画?にして大量に刷って売っている。要するに新聞みたいな、記者みたいなこともしていた様子。

で、カトリック教会の異端審問の残酷な拷問の様子を版画にしてバンバン売ってて、それはメキシコでもすごい売れ行きらしい。

スペイン国教は教会の評判が落ちると心配し、ゴヤに圧力をかけようとするが、修道士ロレンゾ(ハビエル・バルデム)はゴヤをかばい、悪いのはゴヤじゃなくて、異端者の方だ、こういう版画を無くすにはゴヤに圧力をかけるんじゃなくて、異端者を減らせばいいのだ、というものすごい無理くりな理由を考え付き、「魔女狩り」を再開する。

このロレンゾって修道士は、「生臭坊主」っていうか、聖職者のくせに世俗的ってそういうキャラらしい。ゴヤをかばったのも、宮廷画家に描いてもらいたいというエゴで自画像を頼んでいるので、それでかばったみたい。自己チューなんですね。

ゴヤは、チャペルの天井画に描く天使のモデルに娼婦を使ったりする、当時ではぶっ飛び画家だったんだけど、金持ちの商人の娘、イネス(ナタリー・ポートマン)の肖像を請け負う。ロレンゾは、アトリエに自分の肖像を描いてもらうために来た時にイネスの肖像画を見つけ、「いい女だなあ~」とやらしい目で見る。

そえが理由か知らないけど、イネスは異端審問の調査員に目を付けられ、レストランで豚肉を食べなかったことから「隠れユダヤ教」の嫌疑をかけられて、拷問される。

ナタリー・ポートマン嫌いなのですが、それでもこれは可哀想だった!すげーな、異端審問。やっぱ白人って残忍だなあ~って思うけど、日本もキリシタン拷問してたもんね。

ロレンゾを演じるハビエル・バルデムも、こういうきな臭い悪人上手いんだよね~。ゴヤ繋がりでイネスの両親に金を積まれて、イネスを釈放してくれと頼まれるんだけど、教会を説得できず、その上イネスと肉体関係を持つ!!

で、笑うのが、イネスを釈放してくれないロレンゾに業を煮やしたイネスの父親と兄たちに、異端審問と同じ拷問を受け、あっさり「自分は猿だ」という書類にサインする。このあっさり「転ぶ」ところが爆笑!!

で、そのサインした書類が見つかり、ロレンゾは教会に追放される。

しかしすごい時代ですよ。異端審問やってるかと思えば、今度はフランスが攻め込んでくる。フランスは異端審問を止めさせ、囚人は開放されるんだけど、あれから15年も経ってて、イネスはもう、肌はただれ、顔の形も変わり、髪はボサボサ。肖像画のモデルをしていた時はぷっくりして可愛らしかったのに、全くその面影もない。精神的にも病んでる。

これがすっごい印象に残って、あとの話はすっかり忘れてた。

ロレンゾは、教会を追い出された後フランスに渡ってメキメキ成功し、フランスの軍人の1人としてスペインに戻って来る。聖職者を辞めたので結婚もし、家庭も作り・・・こういう、色んな人を踏み台にしても全く罪悪感がなく調子いいヤツが成功するよな~というホントにイヤ~なキャラ上手いよなあバルデム!

イネスの方は、ロレンゾに妊娠させられ、赤ちゃんを産むんだけど、その赤ちゃんも取り上げられ、今や狂人となってその赤ちゃんを探すんだけど、その上、ロレンゾに恋しているんだよね。

辛い監獄生活の中で唯一の救いがロレンゾとセックスすることだったのかなあと思うとすごい可哀想になる。

で、まあこの後も色んな事が起こるのですが、全体的にはぼわ~っとした映画でした。なんでこんな映画撮ったんだろ?なにがテーマなんだろ?とは思う。誰が主人公なのかも良く分かんないし。”Goya’s Ghost” だから、ロレンゾとイネスが主人公ってことなんですかね。

監督・脚本のミロス・フォアマンって誰だ?って思ったら、ななんと私の大好きな『アマデウス』を撮った人じゃありませんか!しかもこの人『カッコーの巣の上で』『ラリー・フリント』『マン・オン・ザ・ムーン』もやってるとは知らなかった。どうもこの作品が遺作らしいです。
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