ぶみ

アングスト/不安のぶみのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
3.5
ジェラルド・カーグル監督、アーウィン・レダー主演によるオーストリア製作の犯罪ドラマ。
刑務所を出所した狂人が、とたんに見境のない行動に出る(公式サイトからの引用)姿を描く。
殺人鬼ヴェルナー・クニーセクが起こした殺人事件をベースとしているが、1983年公開当時、オーストリアでは一週間で上映打ち切り、他国でも上映禁止やビデオ発売禁止となったという曰く付きの作品であり、日本では1988年に『鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜』のタイトルでビデオ化されるも、殆ど流通せず、三十数年の時を経て、今回劇場公開されたという代物。
物語は、主人公が心情を語るナレーション入りで展開していき、とくに余分な説明もなく、ひたすら主人公の行動を追っていくため、ドキュメンタリーを観ているかのよう。
ただ、特徴的なカメラアングルや、ドローンなき時代の長回し空撮映像、シンセサイザーによる不穏な電子音等々により、独特の雰囲気が醸し出されている。
とにかく常軌を逸した行動がひたすら描かれ、語る言葉と行動は支離滅裂であり、通常の映画であればカットするようなシーンも生々しく再現されるため、殺人という行為を余すことなく終始再現した作品と考えると、本作品の存在価値はそこにありか。
一体ラストはどうまとめるのだろうかと思案したものの、見事に映画的な結末に終息させていたのは意外なところ。
今でこそ公開できるものの、当時ではかなりの衝撃作であったことは十分理解できるため、観る人を選ぶ内容であるとともに、フランクフルトが忘れられない一作。

撃ちますよ。
ぶみ

ぶみ