荒野の狼

レッド・ストーム/アフガン侵攻の荒野の狼のレビュー・感想・評価

3.0
レッド・ストーム/アフガン侵攻(Afghan Breakdownアフガン崩壊・破壊)は1991年の140分の戦争映画。アフガニスタン紛争(1978-1989年)をもっともよく描いている映画ということで鑑賞した。1988年にアフガニスタンからソ連が撤退する直前の出来事を描いたイタリアとソ連の合作映画であるが、プロパガンダ映画ではまったくなく、ソ連側の残虐性・戦争の理不尽さは描かれており、よくソ連が、戦争終結から数年で、このような映画を作ったという驚きはある。全体に暗く、光明の見えない映画であるが、こうした戦争の現実をソ連の映画人が残したという点で、本作は良心の発露と言える。
冒頭はリアルな少年の割礼シーンからだが、民族性の違いを見せたいのか、意味は不明。この後は、ソ連軍がアフガンで現地人・兵士(ムジャーヒディーンの兵士)の殺戮とそれに対する報復、自軍内での残酷ないじめが、ドキュメンタリーを思わせるようなリアルさと残虐性で描かれる。女性の登場人物として看護師のKatya (演、タチアナ・ドグヒーレワ Tatyana Dogileva)が主人公(演、ミケーレ・プラチド)の不倫相手として登場するが、こちらの話も暗く、本作はどこまでいってもひたすら陰惨な映画。最終版のソ連軍による村の空爆は凄まじく、民間人の存在にお構いなしに、ヘリからの無差別攻撃が行われ、村が廃墟と化してしまう。ソ連兵は狂気の殺戮者として描かれ、唯一、良心のかけらを残す主人公も、民間人の殺戮に加担することになる。
私は本作をYouTube上の英語字幕版で見たが、英語の字幕の質(訳)が悪かったが、本作は特にひとつひとつのセリフに重要性はなく、ストーリー性もそれほどないので大きな支障とはならなかった。後味は悪いが、戦争の残虐性はよく描かれている作品。
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