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苦役列車のhoteltokyoのレビュー・感想・評価

苦役列車(2012年製作の映画)
3.8
作家西村賢太氏による2010年の芥川賞受賞作品を映画化。幼少時代から父親が性犯罪で捕まり、家庭が崩壊。暗い青春時代の末、区摂津した未熟な育ち方をした貫多の唯一の趣味が読書であった。今を生きるフレッシュな専門学生、日下部にも「バカだと思ったろう?ちゃんと本だって読めるんだ」と教養をアピール。だが貫多の底は浅かった。人にかける情や言葉の引き出しが乏しく、さらに言えば金にもルーズ。基本的に人としてダメと呼ばれるであろうハードルは全てクリアしている貫多にとって日下部の存在はまさにキャパオーバー。だが、これがきっかけで自分を見つめ直し、大きな一歩を踏み出すまでの過程が描かれている。

自分は基本的に映画に登場するダメ人間に弱い。ダメ人間のアイデアはいつだって画期的で斬新だ。いつかなにか別の方法で世界を救うと思う。例えば、本作でも家賃滞納で追い出された部屋で復讐のためにうんこするとか、まさにダメ人間にしかひねり出せないダメ人間だからこそひねりだせるアイデアだと思う。うんこだけに。
アイデアだけでなく、劇中でしょうもなしに食べてるお弁当だったり、居酒屋で飲む安酒やおつまみがとてつもなく美味そうで健康的に見える不思議。多分、日々の糧が滲み出させる味わいがそう感じさせてしまうのかもしれない。サバイバル術だったり生き方だったり、ダメ人間から学ぶことは多い。

2022年2月に急死してしまった作家西村賢太氏にお悔やみ申し上げます。
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