シネラー

ロッキー5/最後のドラマのシネラーのレビュー・感想・評価

ロッキー5/最後のドラマ(1990年製作の映画)
3.0
シリーズ第5作であり、
一旦の完結編でもあった本作を再鑑賞。
過去作とは血色の違う暗さと
無茶な展開に残念さを感じる
ロッキー映画だった。

物語としてはドラゴ戦後、
パンチドランカーの症状と
経理士に騙されて破産した
ロッキーは引退を決意し、
新人ボクサーのトミー・ガンの
トレーナーとなって鍛え上げていくも、
息子であるロッキーJr.との溝や
トミーの裏切りに直面する内容となっている。
シリーズを重ねていくにつれて
ドラマ性が薄くなっていたので、
ロッキーを引退させた上で
初心の場所であるフィラデルフィアに
立ち返る点は良かったと思う。
亡きミッキーとの回想は
本作で一番好きな場面であり、
そこからトレーナーとしての道を進む
のもボクサー人生らしいと思った。
又、本作ではスタローンの実子である
セイジ・スタローンがロッキーJr.を
演じているのだが、
公開当時のスタローンの近況が
作中のロッキーと重なるだけに、
色々と勘ぐってしまう要素でもあった。

しかしながら、
ロッキーとトミーの関係や
ロッキーJr.の問題を主軸に置く割には、
そのどちらも浅い描き方だと思った。
トミーにアポロのトランクスや
ミッキーの形見すらも与えようとする
ロッキーだったが、
それでいてその関係が成功していく
流れがダイジェストで描写される為、
後々のトミー裏切りに対する
ロッキーに感情移入はできなかった。
トミーを溺愛した為にJr.に向き合う事を
疎かにもしてしまうロッキーだが、
そこからのJr.の反抗期と互いの和解も
展開として早すぎると思った。
その上、和解後にロッキーが
トミーの試合を熱烈に観戦しているのが
心境として理解できなかった。
ロッキーが正直で無骨で不器用な性格
なのは知っているが、
それにしても本作のロッキーは
周囲への目を疎かにし過ぎていると思った。
そして、極めつけとなる
トミーとの対決もといストリートファイトだ。
やりたい事は分からなくもないが、
倫理観が末期な展開には爽快さといった
感動よりも心配な思いの方が強かった。
チャンピオン同士の路上乱闘は
熱く燃える展開ではない為、
リング上で決着をつけて欲しかった。

後々の『ロッキー・ザ・ファイナル』や
『クリード チャンプを継ぐ男』にも
通じる師弟と親子の物語もある為、
決して面白くない訳ではないが、
それでもシリーズにおいて
気持ちを燃え上がらせるものが
唯一感じられないロッキー映画だった。
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