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シェラ・デ・コブレの幽霊のkkmovoftdのレビュー・感想・評価

シェラ・デ・コブレの幽霊(1964年製作の映画)
3.5
ついに観た。何を。永遠を。海と溶け合う太陽を。あと「シエラ・デ・コブレの幽霊」を‼‼
全てのホラー映画ファンにとって悲願だった、幻の一作。正直稀少性から神格化されてただけで、中身はあんまり大したことないんじゃないかと思ってたけど、いやはやこれがどうも。色んな前置き抜きにしても大変素晴らしい映画でした。
まずオープニングが霧深い墓場、と思ったらシルエットはそのままに朝靄けぶる現代の街並みに入れ替わって、更にその街並みに津波が襲いかかるような合成がなされて…という手の込んだシークエンス。ヒッチコックの「サイコ」の脚本家が監督ということもあって、単に「オバケってこわいね!」だけじゃなく、「恐ろしいのは幽霊そのものか?それともそれを恐れる人間の心か?」みたいなとこまで掘り下げていて、ほんとにヒッチコックの諸作に比肩しうるくらいの強度を持った作品。
あとお蔵入りの理由として有名な、観た人がバンバン体調崩したという幽霊ですけど、ネガポジ反転した死体の女の人がゆらーっと現れて迫ってくる様は、確かに当時としてはすごく怖かったんじゃないかなぁ。今見ても全然しょうもない感じがしないし、幽霊登場時の音響も金切り声うめき声と現代音楽が合わさったような不快仕様で、全体的にジットリと怖い感じ。あとラストの救われなさも、何とも深い余韻を残しますね。
正直これだけのクオリティを持った作品ならこれからもソフトはリリースされ続けるだろうし、最早これからは「幻の作品」ではなくなってゆくのだろう。ただ、今この時代に生きた我々だけが、幻の作品がついに見られる‼というフェティッシュな愉しみを享受できるのではないだろうか。高度に情報化された現代では、世界に2本しかない幻のフィルムがついにソフト化!なんて有機的な現象は今後どんどんなくなっていくだろうから、今ここに生きてる一映画ファンとして、この映画が幻でなくなる瞬間に立ち会えたのは良かったなぁ、としみじみ思いました。これで一部の好事家だけじゃなく皆が平等にこの素晴らしい映画を観られるようになって、良かったんですよね、きっと。
まだリリースは英語字幕のみですけど、この投稿時点ではまだamazon.jpには出品者がいないようなので、お求めはアメリカのamazon.comか新宿ビデオマーケット等でどうぞ。
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