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CURE キュアのkkmovoftdのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
4.2
『蛇の道』や『蜘蛛の瞳』といい、この頃の黒沢清はバキバキに尖ってると思う。論理的具体的に何かがあるわけではないのに、分裂症的なコラージュから喚起される激烈に嫌なイメージ。この嫌悪感すらもが有史以前の太古から育まれてきた本能のようなものに直接触りかけてくるため、何が嫌なのか自分でも分からない不思議な感覚に陥る。磔にされた猿のミイラ、黒い水が溜まったバスタブ、暗いキッチンから転がり出す蜜柑、喉を掻き切られた妻。これはとても計算してできるものではないと思う。私が観た際は終映後に黒沢清監督のトークもあったのだが、やはり黒沢清自身もしきりに「今だとできないですけど、当時は何か良いと思ったんでしょうねぇ」というニュアンスのことばかり言っていた。やはり天才か。

また黒沢清作品あるあるの、よく分からないけど宇宙的なスケールと繋がっちゃうとこも良い!!犯罪者と独房で退治している時に、天井から突然滴る黒い水滴!そして天井を見上げると垣間見える星々!!どういうこと?理由なんてこまけぇこたぁいいんだよ!
我々はいつだって、起きてしまうことを当惑しながら受け入れるしかないんだから。

〇〇を目の当たりにした役所広司が苦悶に歪む顔を延々と映すところも本当に意地が悪いと思う。あれ15秒くらいあったんじゃないか。しかもその後の展開で明らかになる、そのシーンが意味するものもひどい。何から何まで観てる人を不快にしかしない。…素晴らしい!!!!

そういえばラストのレストランでのシーンも何だか思わせぶりなところで終わるが、あれだってちゃんとその後のコトが起こるシーンまで撮影したらしい。でも「何かそっちの方がいいかな」と思って途中で切っちゃったんですって。なんて恐ろしい子……!!

私は爆音上映イベントで本作を観て、終始不快で色んな音が鳴っていてこれも大変に良かったのですが、これも映画館によっては全然聴こえないんですって。例によって「映画館によっては全然聞こえないだろうけどまぁいいかと思って入れました」みたいなことを黒沢清は言ってましたが。なので、これからご覧になる方は是非できる限りの爆音でどうぞ。

あと久しぶりに観たうじきつよしが、やたら横に広い服ばっかり着てたのもかわいくて良かったです。
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