しゃにむ

エイリアン2 完全版のしゃにむのレビュー・感想・評価

エイリアン2 完全版(1986年製作の映画)
4.8
「うちの子に構わないで!」

< ママ・オブ・ザ・スティール >
オカンが走る…‼︎

・あらすじ↓
ノストロモ号の惨劇の唯一の生存者リプリーの乗った宇宙船が回収される。長い航海の果てに彼女を待ち受けたのは残酷な現実…57年も地球軌道上を回っていたのだ。最愛の娘は老衰で母より先に死去。悲嘆に暮れるリプリーに追い打ちをかける知らせが舞い込む。異星人の星・惑星Lv426に植民基地が作られ何百人もの開拓者が居住していると言う。悪い予感は的中、植民基地から通信が途絶えリプリーは再び悪夢の星に舞い戻ることに…

・概要
人類最強オカンが宇宙ゴキ◯リを根こそぎ駆逐する痛快お掃除SFアクション作品。あらゆる意味で革命的でした。1つ目は「ヒット作の2作目は不発に終わりやすい」というジンクスを軽々と爆破、違うフィールドで新たな金字塔を打ち立ててしまったこと。声にならない悲鳴が喉の奥で何度もこだまする最恐SFホラー映画…前作の視聴者が一方的にビビらされる受動的イメージから一変して「害虫は消毒だ〜〜‼︎」と叫ばずにはいられない恐怖ブレイカーの革命的能動作品に転身。これ以降のモンスターズ映画はエイリアン2に似たり寄ったりで模範かつ基本になってると言っても過言ではないでしょう。2つ目はリプリーを通して「戦うヒロイン」という切り口をポピュラーにした功績にあります。従来のアクション映画の主役は男性が多くヒロインは(悪く言えば)お飾り…ピーチ姫のポジション程度だった常識を覆した偉業を成した。

→ 今度は戦争だ
ヒットメーカー・キャメロン監督が手がける作品は大衆ウケしやすいダイナミックなスケールが特徴的で今作も例外でない。1作目は宇宙船内に限られ実質的密室が舞台で構図も絶対的強者エイリアンと貧弱で狩られるしかない人間の2つで成立…こじんまりしてる。対して2作目は宇宙船内に限らず惑星に作られた植民基地全体が舞台となっており格段にスケールアップしている。さらに構図もずいぶんと様変わり…エイリアンは1匹ではなく100匹以上と遥かに増えている。個々の恐怖をじっくり描くことはなくなったものの「群れ」の恐怖を嫌というほど描き出す。1匹でも大の大人も震え上がるバケモノの群れに遭遇したら…想像するだけで失神しかねない。舞台装置と役者(バケモノ)がケタ違いになればキャメロン監督の「今度は戦争だ」というコンセプトが十分生きてくるというもの。

→ 群れの恐怖
前作の焼き直し…とは断じて違います。前作はたった1匹の怪物に数で勝る人間達が逃げ場のない宇宙の孤島でじわじわと血祭りにされる「静」の恐怖が持ち味でした。今作はバカみたいに数が増えます。ハチは1匹でも恐ろしいけど、もしハチの巣に紛れ込んだら…的な妄想をしたらそれに近い恐怖がある。口先だけの海兵隊がエイリアンの巣に考えもなしに侵入してゆくシーンが印象的です。機械と生物が融合した不気味な肉の壁の中で身を潜めひしめき合う無数のエイリアン…そうとも知らずバカ正直に巣を通り抜ける海兵隊。生存本能がシンプルに「ヤバい」と訴えかけるよう悪夢のような光景。個人的に恐怖度が最大値に達したのはセントリー銃のくだり。心もとない弾数でうじゃうじゃ群れでやって来る怪物どもを次々とミンチにするのはいいけど数で負けて一気に弾が無くなります。人間を簡単に惨殺する怪物どもがすぐ目と鼻の先にいるという予感は怖すぎる。また撃ち殺される怪物の悲鳴しか聞こえない演出も恐怖を引き立てる気がします。何回観ても怖い。

→ 母は強し
群れの恐怖と同立で今作を傑作たらしめる要素は母親のたくましさでしょう。リプリーは同情し切れないほど悲しい母親です。不運な事故のせいで50年以上も宇宙をさまよい続けて目が覚めたら最愛の娘は自分より先に天寿をまっとうして亡くなっていた。こんな奇妙で悲しい親子関係は無いと思います。インターステラー的な絶望ですね。ですから肉親を怪物に亡き者にされた孤児のニュートを守ってあげたい気持ちがリプリーの不動のポリシーになります。大事なものを奪われ続けた人生への最後の意地の反抗(闘い)です。一番母性に感動したのはニュートがエイリアンに連れ去られ助かる見込みが無く基地が爆発寸前で脱出可能な状況でリプリーが危険を顧みずニュートを救出に向かった場面です。助けられる可能性がほとんど無いのに人間はあんな地獄に戻って行けるものなのか。無償の愛というか献身。母親は最強。敵対するエイリアンにも母親クイーンがいてリプリーと母親同士の死闘を繰り広げます(ママ友にはなれませんね笑) 殺戮本能しかないエイリアンにも母性があるのは驚き…母性は種族に関係なく普遍的に存在するのでしょう。今作を壮絶に盛り上げるのはリプリーとクイーンの母性同士のガチンコ対決でしょう。種族の垣根を越えた母性の凄まじさに圧倒されるばかり。最終的なリプリーの戦果はエイリアン100匹以上退治とクイーン1匹退治…プレデターも真っ青なエイリアンハンターの誕生だ。

→ 補足
エイリアン1と2の間を描いた作品があるので軽くご紹介しておきます。

小説「エイリアン虚空の影」…1の後に漂流中のリプリーがエイリアンの巣食う宇宙船に拾われる何とも傍迷惑な話。そんな話2のリプリーは言ってなかったけれど…最後はつじつまが合う設定です(まぁ、多少はね?)

ゲーム「Alien Isolation」…リプリーの娘アマンダが行方不明のリプリーを探しに宇宙に旅立ってエイリアンに遭遇する血は争えないなと頷ける話。クオリティがハンパなく実況動画だけでもチビリそうになる程怖い。1のオマージュが多々ありマニアはヨダレもの。

・終わりに
母の日に是非とも観たい作品です。母の日頃の苦労に感謝を込めて好奇の視線にさらされながらもケーキを買ったはいいけど本人が母の日自体忘れていた…というオチにめげずにケーキを頬張りつつ鑑賞です(半ギレ) ぼちぼちやるべきことに集中しなければならないのでいっそう髪と影が薄くなりスローペースになるかと思いますが関心のある方に読んで頂けて何かしら役立てていたらテカります。
しゃにむ

しゃにむ