いの

コントラクト・キラーのいののレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
4.0
カウリスマキの手にかかると、役者は誰も彼もがカウリスマキ映画の登場人物にちゃんとなるのかしらね(それって当たり前のこと?)。例えば『大人は判ってくれない』のジャン=ピエール・レオー(今作の主役)は、孤独感はMAX、そしてそれに反比例したコミュ力&ヘンテコ力。本気で自殺しようと思っている男性を演じてるのに、どこかユーモラスで笑いを誘う。


カウリスマキ的省略。カウリスマキ的跳躍。カウリスマキ的ファンタジー。そんなんあり得ないという展開が其処此処にあるのにもかかわらず、というよりもむしろ積極的に、そんなんあり得ない展開をカウリスマキならあり得ると思わせてしまう匠の技がここでも健在(例:どして貴方、そこでハンバーガー焼いてるんだ?)。なんの言い訳もしない主人公アンリを、なんのためらいもなく女性が信じ切ることのできる強さも好きだ。


カウリスマキの映画は緑色がいつも印象的。壁の色は青みを含んだ緑。そこに差し込まれる赤(女性の服、薔薇、口紅等々)。緑と赤では〝100パーセントの恋愛小説〟になっちゃうけど、あれはノルウェーで今作の舞台はロンドンだった(でもやっぱりいつものカウリスマキの場所っぽい)。


格好いい音楽だなぁと思ったらジョー・ストラマー登場(全然詳しくありませんっ)。殺し屋ケネス・コリーは、どこかで観たことあるぞと思ったらSWでの提督。ラストはどうなるのかと3パターンの結末を想像したけど、とにかくハラハラしました。


移民問題(移民は真っ先に解雇される)から目をそらさない姿勢とか、「労働者階級に祖国はない」という台詞とか。カウリスマキ流の反骨ももちろん好きです
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