絶望のかなた
リストラされ、将来を悲観した主人公アンリは、殺し屋に自分自身の殺害を依頼する。しかしそんな矢先、彼は薔薇売りの女性マーガレットに恋をしてしまうのでした。
口下手なカウリスマキ監督による生と死の創作落語。シュールでミゼラボーでキュートでクール。ハの字眉毛で笑う感じ。
フォールアウトの如き英国のディストピア的風景。整列した事務机と鈍色の廊下。彼のくすんだ世界は、薔薇売りの彼女と出会ってから、みるみる色付いていく。臆面もなく配色される赤。Her Eyes Were Blue.
サブテキストのお手本のようなカウリスマキ監督の脚本は、大体登場人物の心情とは真逆の言葉が放たれるんだけど、今作では取り分けナイーブに、ロマンチックに響く。
日常が日常的であるという奇跡。