TAK44マグナム

モンキー・シャインのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

モンキー・シャイン(1988年製作の映画)
3.2
お猿さん、殺っちゃって!


事故によって四肢が動かせなくなった主人公の世話を知能が高いお猿さんがすることになるが、主人公の怒りの思いがお猿さんに伝染、頼んでもいないのに憎い相手をお猿さんが代わりに成敗してくれちゃうアニマル・スリラー。
監督は、この世に「ゾンビ」という概念を根付かせた偉大なるクリエイターであるジョージ・A・ロメロ。
ゾンビも怖いがお猿さんだって怖い。


やはり、お猿さんのお芝居が良いんですよね。
もちろん、本物のお猿さんをアニマルトレーナーが調教して演技させていますが、これだけ出ずっぱりだとさぞかし苦労も多かっただろうなぁと想像に難くありませんね。
まぁ、大半は何かをやらして、それがうまくいくとご褒美の餌が貰えるシーンなので猿回しやイルカショーとかとさほど変わらないのですが、表情とか仕草の微妙な感じを撮るのってそれなりに大変なのではないでしょうか。


ホラーとして観ると怖いわけではなく、モンスター役はお猿さんなわけですけれど、実験のせいなので何だか可哀想。
主人公も最初はお猿さんがいないと俺はダメなんだ!ってなっていたのが、どうやらお猿さんが人殺しをしていると知ると掌を返しますからね。
最後も割とヒドイ(汗)
新しい人間の恋人ができたからお猿さんの事はもうどうでも良いのか・・・

お猿さん、というか主人公の怒りにふれて数人の犠牲者がでますが、グロさは皆無です。
そういったビジュアルでみせる作品ではなく、主人公を含む人間の身勝手さが結局は悲劇を生んでしまう過程を重視した作品。
いまだったらバッドエンドにしても面白いかもしれませんね。
主人公は事故ったのは可哀想だし自暴自棄になるのも分かるのですが、ちょっと共感しかねる場面が多かったです。

あと、気になった点は2つあって。
主人公とヒロインがたくさんのお猿さんに囲まれた場所で初セックスに挑むのですが、ケイト・マクニール演じるヒロインが意外とワイルドでした(苦笑)
あんなにお猿さんがキーキー鳴いている中ではしたくないなぁ〜。
人間に近い動物なだけに、公衆の面前でセックスしているみたいで・・・
あ、もしかして、だからこそ燃えていたのか(苦笑)

それと、これ「アップグレード」の製作でリー・ワネルが影響受けたんじゃないですかね?
それもいうのも、四肢が動かせなくなった主人公が何かしらの力を得て復讐するって基本プロットが似ている気がして。
超AIか、お猿さんか。
お母さんに身体を拭いてもらう場面がどちらにもありましたしね。


恋人を奪う天才医師の役でスタンリー・トゥイッチが出ておりましたが、別にこれといって活躍することなく、お猿さんによってあえなく成敗されてしまいました。
患者の恋人を奪っちゃダメ!という教訓なのでしょう。
また、ヒステリックなお手伝いさん役でロメロ夫人で(後に離婚)「ゾンビ」にもチョイ役で顔を見せていたクリスティーン・フォレストも出演。
いつもの間にかいなくなってしまって見せ場が少なく残念。
もっとヒステリックに騒いで欲しかったですね。


全体的におとなしめなので最近の過激な描写がウリのホラーやスリラーと比べると牧歌的ですけれど、お猿さんのことを思うと切なくもなる、人間って身勝手だなと思ってしまう作品。
ゾンビじゃないロメロ作品も観たいな、という時のチョイスにうってつけですし、ホラー初心者にも優しい。
ただし、110分以上の尺はこの内容としては些か長いと感じました。