Narmy

ブレスのNarmyのレビュー・感想・評価

ブレス(2007年製作の映画)
3.3
静寂の中、異質な音だけが響き始める。
死刑囚チャン・ジンは3人の男達と共に執行前の不安定な日々を過ごす。
その男達との房には異様な連帯感と親密感が漂う。
同じ頃、夫の浮気に気づいてしまい表情をなくす妻。
ぽつんと建つ閉鎖的な家で、誰ともコンタクトをとることなく、物思いにふける日々。
その夜、浮気相手の髪留めがきっかけで争いとなった妻は家を飛び出し、ふと思いつきニュースで目にしていたチャン・ジンに会いに刑務所へと向かう。

それこそ息をしているというだけで、生きることに絶望し苦しむ2人が、会う度に少しずつ生気を取り戻す。
子供のように純粋で目を潤ませながら欲望のままに動くチャン・ジンは、自分が犠牲にしたものを、この妻に重ね合わせていたのだろうか、、
無言で家を出て刑務所に向かう妻も、チャン・ジンの前では饒舌になり、夫との出会いを含む幸せだった1年を再生してしまうほどに夫への愛が深いのだろうか、、

全体としては、覗き見をする保安課長や、最後どことなくいい人に見えてくる夫、刑務所にいる個性的な面々に退屈はしない。
ただ、喧騒が全く感じられず静かな空間に突飛な色使い、刑務所でのありえない面会の様子など、どこか現実とはかけ離れていて掴みどころがない。

登場人物達はみな何かしら愛しているからこその異常な行動をとるんだけど、本能の赴くままに動く無茶苦茶な展開の中でも、ラストは愛情や友情が混ざり合い溢れだしていて、そのことに違和感を感じることもなく納得させる力を持つ不思議な作品。
Narmy

Narmy