kyoko

平成ジレンマのkyokoのレビュー・感想・評価

平成ジレンマ(2010年製作の映画)
4.1
1980年代、世は校内暴力真っ盛り、「そんなことをしたらヨットスクールに入れるぞ」が大人の脅し文句になっていた時代、戸塚ヨットスクールで計4人の訓練生が死亡する事件が起きた。いきすぎた体罰が傷害致死とみなされ、逮捕された戸塚校長が不適な笑みを浮かべてカメラに手錠を見せつけた場面はなんとなく覚えている。
2006年に刑期を終えた校長がその後またスクールを再開していたとは知らなかった。

年に何度もおこなわれる講演会では、学校教師たちが、PTAの保護者たちが、真剣に戸塚校長の話に耳を傾けている。
「子どもはまだ人格ができあがっていない。罰を与えることで形成されていくのだ」
とんでもない考え方だ。なのに「教育現場から体罰が無くなった今、学校で何が起こってますか?」と戸塚校長にあのアルカイックスマイルで真正面から問われると、とたんに揺らぎ出す。
ジレンマだ。

夏休みを利用してスクールにきた小学生が年長者に殴られて目を腫らしていた。
「いじめは仲間を進歩させようとする本能だ」
そんなわけあるか!と思っていたら、夏休みが終わって、彼は正式な練習生として入校してきた。散々バカにしていた年長者たちとも対等に話している顔つきは、夏休みの少年とはまるで違っている。彼はあきらかに強くなっていた。
ジレンマだ。

養護施設の施設長が「戸塚校長の考え方は肯定も否定もしない」と言っていたように、どこかおかしいと思いながらもついうなずきそうになる自分がいる。何が正解なのか、観た後はずっと頭がぐるぐるしていた。

スクールには20代以上のニートやひきこもりが増え、とうとう40歳の男性が入ってきた。肉体と精神の強化は若ければ若いほど効果があると言う校長にとってこの流れはかなり憂うべき事態と思われる。また、終盤では誰も予想できなかった事件が起きたが、これによって今後はかなり神経質にならざるをえないだろう。
でも入学金300万、月11万(現在は15万らしい)の実入りはデカイ。
それこそが校長のジレンマかもね。
kyoko

kyoko