このレビューはネタバレを含みます
上映前に江戸木純さんの生・音声解説があった。
この解説を聞かなかったら、殴られる刑事さん(警部補見習いさん)が「バニシング-消失-」のサイコ犯人だとも、果てはホームレスのおじさんが「オー!」の同房の人(こっちもホームレス)だとも気付かなかったろうなあ。
そして、解説を聞いてからだと余計にモリコーネ節が沁みます。
予告編で見てる時、薄汚れて歩くベルモンドがスタローンに似てるなあと思っていた。
国の命令でアフリカまで大統領暗殺に出向いたのに、その都合で2年間も投獄され重労働を課される役どころもスタローンにありそう。
しかしマッチョな力業にモノ言わすのではなくて、裏をかいたりして汚い手も含めて束になってかかってくる相手にたった1人でてんてこ舞いさせる様が楽しい。
またアクションもやはり凄くて、エッフェル塔の下でのカーチェイスなどよくこんなこと出来たなあと逆に呆れてしまう。
行く先々で美女にモテモテでも不思議がないのがベルモンドの魅力なんだろか。
凄腕でハードボイルドな魅力を醸すのに、美女の前ではお洒落でユーモラス。彼の作戦の成功には彼女達の協力がある。
美女といえば奥さんを何故か興奮MAXで責めるスウェーデン人の美女は、あの人なんだったんだろう?職務中に裸は見れないと言って場を外す宿敵もなんか笑えたぞ。
最後の決戦の地、田舎の古城(素敵)に単身乗り込む時もまた大胆。ガッチガチに固めていても実態はスキだらけという警備態勢は、上辺だけ取り繕っているけど無能な国の態勢と似通うところがある。
やっぱりそれを引っ掻き回しまくり、守る相手を倒すという結果に導く。
そんな彼をどうするか、なかなか決断の出せないお偉いさんの無能さと、あえて自分の運命をその前に投げ出すベルモンドのカッコよさ。やろうと思えば余裕で逃走も出来たであろうに…。
アクションとしての楽しさもあり孤高のヒロイズムを感じる魅力もあり。
モリコーネの音楽はこの作品全体を象徴するような物哀しさで、それに導かれるようにベルモンドの色んな面を一度に見られる作品だったと思う