Fitzcarraldo

ゴキブリ刑事のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

ゴキブリ刑事(1973年製作の映画)
3.8
暴力列島をゆさぶり走る飢えた牙!
警察手帖は殺人のパスポートか
殺すことしか解決を知らぬ
人呼んでゴキブリ刑事

ーという荒々しい惹句が踊るポスター。

新岡勲による同名漫画を原作に、ダーティーハリーの日本版を作ろうと、スリーピースに角刈りの渡哲也扮するゴキブリ(暴力団)狩りを自認する人呼んでゴキブリ刑事が、相手に銃を持たせてからの早撃ちで脳みそを吹き飛ばし、「これが正当防衛ってやつだよ」と捨て台詞を吐く『大都会』『西部警察』の原点となる一作。

監督は同年に東宝の幻の特撮テレビ番組『クレクレタコラ』の監督のひとりをも務める小谷承靖。

脚本は後に尾道三部作を務める剣持亘。


○空き地
綺麗なマジックアワーでのオープニング。
紫色の空の下、逃げる男と追う男たち。


○タイトルバッグ
『薄氷の殺人』のオープニングに似てる。
まさかここから引っ張ってきてないよな?


○利根荘
渡哲也演じるゴキブリ刑事の鳴神涼。
歯磨きからの、インスタントコーヒーを飲もうとヤカンに水を入れて…ガスが点かない。
仕方ないので、インスタントの粉をそのままコップに入れて、水道水を投入。歯ブラシの逆側を使い掻き混ぜて、一気に飲む。

ワイルドたぜぇ!
スギちゃんが遠く霞んでしまうほど、ワイルドのお手本を見せてくれる渡哲也。
なんだこのシーンは…す、素晴らしい!

この男っぷり。角刈りと相乗効果で、ただただカッコイイ…いまの草食系男子全盛のこの時代には絶滅危惧種となってしまった…こういう男らしい役を演れる人がいなくなってしまったのと、世間一般には需要がないのが寂しいところ。



街に巣食うゴキブリ共を片っ端から挙げていく鳴神。ゴキブリの右足首と左手にワッパをかける!これは初めて見た。こんなやり方あるのか?めちゃめちゃフレッシュや!そして、その状態で歩かせる。といってもほとんど歩けてないけど…これはいい!

脚本や構成、スジなども大切だが、こういう見たこともないフレッシュな表現が見られると嬉しくなる。何度も何度も擦られた同じものを見せられるのには辟易する。

水道水コーヒーの一気飲みもフレッシュだし…
なにか新しい表現なり工夫なりが見たい。


○取調室
引っ張ってきたゴキブリ3匹をだんご3兄弟状態で互いに肩を組ませて、ワッパで繋ぐ。こんなシーンも今まで見たこともない。

瓶のコカコーラを、動けないゴキブリ3兄弟に一気飲みで攻撃したあと、ガムテープで口に固定したタバコを無理矢理吸わせる。しかもひとり5本ずつ!スモーカー大佐どころの騒ぎじゃない!笑っちゃうくらいに、す、す、素晴らしい!


○ヤクザの事務所
だんご3兄弟のゴキブリは釈放されて、兄貴連中からシゴキを受けている。

爪の間に万年筆を、じわじわゆっくりと挿し込まれている。え?これ…ホントにやってる?作り物には見えないんだけど…いやこれホントにやってるって…!腰が浮いちゃう…



○署長室
若かりし神山繁演じる三田署長。
三田
「そりゃお前の強引なやり方も…わからんでもない…。だが昨夜お前がやったホトケはどう説明する気だ!相手の拳銃には弾がなかったって言うじゃないか!それじゃ刑事の殺しじゃないか?!」

えっ?!昨夜の現場には鳴神とシャブ中の女しかいなかったんだけど…ゴキブリの弾が無くなってから撃ったのは、その場にいる人間しか分かり得ない。あんた見てないでしょ?!又聞きだとしても、その又聞きは誰から聞いたのよ?自分で言うわけないんだから。



○砂山
なぜか車ごと吊るされて放置される鳴神。
なぜ放置?殺したいんちゃうの?

そこから抜け出す鳴神。


○警察
任務を外すと署長命令。

三田
「君には降りてもらうつもりだ。やり過ぎだったな。昨日から自警団や町の連中が、ひっきりなしに抗議だ。それに君の手荒な作戦で殉職者まで出してしまった」

鳴神
「ハメやがったな」

????どこに?なにが?どう?

署長
「一応、拳銃を預かる」

鳴神
「はなっからやるだけやらしといて、てめえは口を拭う気でいたな?!」

んー?どいううことだ?なんのためにやるだけやらせるの?え?よくわからんけど…


○暗い道
深江章喜演じる鮫島の居所がわかったと、地井武男演じる刑事の武井が呼びに来る。

鳴神と武井が歩いている。

武井が鳴神の背後から銃を抜こうとする。
すると鳴神は、どうしてヤクをやったんだと詰め寄る。え?そうなの?武井がやってたの?そんな身振り手振りありました?どういうこと?ん?


そのあと贖罪のつもりか…鳴神のコートを奪い、それを着ると、鳴神になりすましてるつもりなのか…そのまま坂道を下ると…鮫島の手下が狙いすまして鳴神のコートを着た武井を撃ち抜く。

どう考えても暗すぎて、コートの見極めも困難だと思うけど…どっちがどっちだか判別できない暗さだったけど…あの暗さでスコープもなしによく当てられたなぁ。

その後、怒り狂った鳴神は、ブルトーザーで手下共のヤサごと、お好み焼きのようにきれいにひっくり返す。


○楽屋
鮫島の政治後援会。
楽屋に戻る悪の権化である鮫島。

鳴神、鮫島に銃を持たせてからの…見事な早撃ちで脳みそを吹き飛ばし、
「これが正当防衛ってやつだよ」と捨て台詞。


○車で立ち去る鳴神
後半畳み掛けるように、あっさりと終わる。
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