ほーく

マルコヴィッチの穴のほーくのネタバレレビュー・内容・結末

マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

蔵出しレビュー。
時は、2001年3月14日

【荒唐無稽】
私の好きな言葉です

マキトモさん頼みが続いております
今なら、いくらか自力でレビューできたんでしょうかねえ

邦題「マルコヴィッチの穴」
原題「Being John Malkovich」


評者 ほーく
評価 5
ひとこと バカウケ!詳細は、マキトモさんにお任せ

評者 マキトモ
評価 5
ひとこと 大変な離れ業をやってのけた度5。油断すると訳が分からなくなる、不条理モノの傑作だ。


コメント


 この厄介な傑作を語る際、誰もが奇抜な設定の方に目を向け、「観客の既成概念を覆す展開」などと話をまとめるが、それはこの映画の半分でしかない。設定が奇抜なだけの駄作は、腐るほどある。むしろ、設定を周辺で支えるディテールの確さ、(奇抜とは逆の)現実感の丁寧な積み重ねが、本作の真に注目すべき点である。本作特有の、有無を言わせぬ強靭な「不条理へと観客を引き込む力」は、前振りの仕事の良さにある。
 具体的に言おう。「ビルの7階1/2の壁の穴は、中に吸い込まれると、俳優マルコビッチ氏の頭の中を通って郊外の高速道路の路肩に落下する」…本作を中盤以降だけ見たら、バカバカしいに違いない。この強引で荒唐無稽な設定に観客を引き込む前段階で、作り手は、主人公を苦境と不安の中へ追い詰めている。その手際は実に理詰めでリアルで、そして何より丁寧だ。人形遣いとしての才能/人形と自分の才能への執着/チャンスの無さ/淋しがっている妻とのすれ違い/お金の絶対的不足/美人同僚への一目惚れetc…がのしかかってきて、不条理が徐々に顔を覗かせる時には、もう主人公は、NOが言えない状態に陥っているのだ。ここらへんの主人公のヘロヘロ感が、実にいい。


 かくして、主人公の心にエアポケットが出来たことを、観客は確認する。その心のエアポケットに、作り手は、不条理な設定を、有無を言わせず流し込む。こうなったら最後、その後の場面展開は作り手の思うがままだ。つまり本作は、不条理自体が巧妙なのではなく、心のエアポケットの表現、が巧妙なのだ。心にエアポケットを作る+有無を言わせず流し込む/不条理かどうかは既に問題では無い。…やれ恐ろしや、これはマインドコントロールと同じ構図ではないか。


 ディテールになるが、人形の動作が極めて繊細なのが印象に残っている。この人形をテーマに佳作が一つ作れるくらい、極めて優れたものだった。キャスティングは、ほとんど絶妙。ただ、キャサリン・キーナーは、ヘロヘロ男が一目惚れするには今一つロリ気が足りない気がする。音楽、照明等は予算相応だ。

(マキトモ)
ほーく

ほーく