継

離魂の継のレビュー・感想・評価

離魂(1987年製作の映画)
4.1
愛した男に殺害され, この世に恨みを残して死んだ女。
亡骸(なきがら)を離れたその魂は, 失恋で傷付いた舞踏家の女に憑依し, やがて恨みを晴らすべく猟奇殺人を繰り返して行く。。。

「CURE/キュア」とか「蛇の道」とか,黒沢清にハマってた頃に読んだその著作「映画はおそろしい」に紹介されてて知った幻の怪奇映画('87年,香港作).

ヒッチコックやデ・パルマ, カーペンターを出汁(だし)に用いてコトコト煮込んだ旨味たっぷりなスープに,
目からビーム出したり(吊るされて)スーッと宙を飛んでく特撮や, 安っぽいシンセの劇伴という,伸びきった麺のような脱力を誘う'80年代テイストを臆面なく絡めて他にない珍味を味わすオカルト・ホラー🍜.

台湾出身の監督フレッド・タンは批評家出身だそうだけど, リーフレットのインタビュー('88カンヌ映画祭で採録)を読むとそれが頷けるcinefilぶりが伺えると共に,
当時の台湾映画界の事情を丁寧にかいつまんで伝えんとする知的で真面目な人柄が偲ばれる。

上述の異色な世界観から, (いつか破綻するだろう)と鷹を括り, 同時にタガが外れた様なブッ飛んだ展開を期待させたストーリーはしかし, 脚本も手掛ける作り手の「人となり」を映すように貫徹していて動線は最後までブレないままだった。

そりゃあ元ネタの出汁は効いててニヤッ😼とさせるし,噛み付いてくる生首にはゾワッ🙀!となるんだけど,
意地の悪い言い方をさせて貰うなら,例えばカーペンターのあの独特なイヤ〜な感じ?こびりついた体臭みたいにクセになる妙味は, 元批評家の店主にはあと一歩出せなかったというか🍜。いや,面白かったですけどね凄くヽ(`Д´#)ノドッチヤネン!  

東洋的なテーマを,作り手が愛して止まなかったアメリカ映画的なスタイルでスピーディーに一気に描き切った90分。
だが, ソフト特典の静止画ギャラリーには検閲でカットされたと思われるラブシーンが不意に現れてハッとさせられる。
権力の無粋な横槍は, 不振に終わった興行や的外れな評価と相まって不本意だったに違いなくて。にわかに再評価の機運が高まった現在, でも最早ディレクターズカットは望めない。
本作の3年後,わずか41歳の若さで他界してしまったフレッド・タン。
恨みを, 遺してはいなかったか…?
狂気じみた才気みたいなものが垣間見れただけに,尚更残念に思います。
継