悪魔の毒々クチビル

ハロウィン IIIの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ハロウィン III(1982年製作の映画)
3.6
「君は本当のハロウィンを知らない」

ブギーマンではなく、魔術の力を宿らせたハロウィンマスクを売り捌く謎の企業シルバーシャムロックの恐怖を描いたお話。


最近再び人気を取り戻してきたハロウィンシリーズの、異端児的なポジションが今作。
マイケル・マイヤーズを敢えて出さずに「マンネリ回避の為に、今後はハロウィンに起こる恐怖を描くシリーズにする」と息巻いたジョン・カーペンターの試みが見事に滑った作品です。
因みに劇中のCMで「ハロウィン」の1シーンが流れていたり、電話のオペレーターの声がジェイミー・リー・カーティスだったりと小匙1杯ほどの「ハロウィン」要素はあります。あるって言えるのかな。まぁいいや。
あとスコアはジョン・カーペンターが関わっています。
監督は後にTV版「IT」を手掛けるトミー・リー・ウォーレス。元々ジョー・ダンテが監督する予定だったらしいけど。

俺は高校生の頃に1~3まで短いスパンで纏めて観て、今作に関しては「何だこれ全然違うじゃん」って印象しか残っていませんでした。
しかしかなーり久々に観てみると、これはこれでアリかなと思える作品でした。
勿論「ハロウィン」シリーズだと思って観ると何の存在価値もありませんが、ケルト族の末裔がストーンヘンジの魔法で死のマスクを造るというオカルト設定は割と好きです。
製造工場のある街なんかでよく見掛ける謎の黒服の男達の佇まいはマイケル・マイヤーズっぽさがありますが、作品の雰囲気は後半に進むに連れて「ボディ・スナッチャー」辺りのソレに近くなります。
劇中何度も流れるシルバーシャムロックのCMも無駄にキャッチーで面白い。

ゴアシーンは片手で数える程しかありませんが、最初は素手で頭蓋骨粉砕して次は素手で首を引っこ抜いて、と段々アグレッシブになって行きます。
その後"誤射"を浴びたおばさんの顔がグチャグチャになるシーンがありますが、ここの顔面崩壊っぷりは大変素晴らしかったです。
粉々って訳ではありませんが、爛れ具合なんかが最近観たゴア描写の中で一番印象的でした。
ここが観られただけで満足です。
因みにマスクを着けた子どもの頭部から虫や蛇が大量に湧き出して死ぬシーンも、中身がどんな様子かは分かりませんが意味不明過ぎてこれまた強烈でした。出てきた蛇に咬まれて親も死ぬという二次災害付き。

登場人物もまぁ適当というか。
主人公のおっさん医師と最近の被害者の娘とで、工場を探りに行く流れなんだけどこの主人公が女たらしな上に地味にモテる。
父親の死の真相を探りに来たとは思えないテンションで、主人公を誘う美人美乳な娘。羨ましい。翌朝二回戦を求めてくる美人美乳な娘。羨ましい。
でもあのラストを考慮するとやっぱ羨ましくない。

結局4作目からはマイコーが復活するも、そこから数作はほぼグダグダで近年出たリブート版も2までの出来事以外は無かった事になっている辺り、あながちこの路線変更も間違いでは無かったのではと一瞬思えて来たり来なかったり。
そう考えると超能力少女にボコられたり、役割を別キャラにバトンタッチしたり、心臓だけで動く寄生体になったりと何度もアプローチ方法を変えて最終的に宇宙でメタリック化した「13金」シリーズって凄いですよね。

奇妙だけど、何処か魅力のある作品でした。
取り敢えず顔面崩壊なんかは良かったので、興味無い人もそこまで観たら後は劇中CMのボポ♪ボポ♪ボポ♪ボポ♪という曲に合わせて小一時間カクカク愉快に踊っていれば多分本編が終わっていると思うよ。