当時観たものの、何故か印象が薄く、記憶が曖昧だったため、久しぶりにデンゼル・ワシントンの若かりし頃の作品を観直してみたよ。
19年ぶりに観直したことにより、諸々新たに気付いたこともあるので、そこに焦点を当ててコメントしておこうと思う。
当時まだ54歳という若さで、副大統領候補の息子を持つ母親役を演じたメリル・ストリープが好演技だったよ。
野心のために息子や軍人たちの脳にインプラントし殺人までさせる母親、というキャラクターを見事に演じていた。
流石と言わざるを得ない。
当時は気付かなかったが、この母親は息子と近親相姦の関係にあるようだな。
その点については、観ていて少々気分が悪くなったよ。
デンゼル・ワシントンの演技についてだが、冒頭から一貫して、どことなく心ここに在らず、という雰囲気を保っていたため、前半は、彼は演技に身が入っていないのか、と思わせるが、実は脳のインプラントと洗脳により記憶がリプレースされていて、なおかつ、暗示により他人の指示で動かされている状態にある、ということが分かった時、彼の見事な演技に感服したよ。
当時まだ64歳であるはずのジョン・ヴォイトが、普通にお爺ちゃんだったことに少々ショックを受けたよ。
ジェフリー・ライトが出演していたことを全く覚えていなかったが、インプラントと洗脳により精神が侵されてしまった元軍人という役を巧く演じていた。
彼は「ウェスト・ワールド」シリーズでも、難しい設定の役を見事に演じきっているが、こうして改めて観ていると、彼もまた素晴らしい俳優なのだと認識させられたよ。
そして、190cm超えの副大統領候補役で当時35歳のリーヴ・シュレイバーだが、私は主観的には彼の印象が常日頃から薄い。
明確に記憶に残っている映画は、ウルヴァリンの兄貴役くらいなのだが、本作での副大統領候補役の彼もまた、インプラントと洗脳による支配下にある人間というキャラクターを巧みに演じていた。
彼の最期のシーンは、観ているこちらの目頭が熱くなるほどだったよ。
いわゆるSFスリラー映画だが、SF(サイエンス&フィクション)の色が濃く、劇中で罪を犯す人間たちは皆、単に野心を原動力とした腐敗政治家というだけのことであった点は、訴求力が極めて弱いと感じたよ。
ここまで仰々しい計画と技術と人間たちを仕込んでおいて、単に息子を大統領にしたかった、というだけでは弱すぎであろう。
普通に催眠と暗示だけで充分に同じ結果が得られると私は思うよ。
映画としてのクオリティは高くはないが、出演俳優陣の見事な演技に加点をしておきたいと思う。