こたつむり

バットマンのこたつむりのレビュー・感想・評価

バットマン(1989年製作の映画)
3.1
闇に響き渡る道化師の嘲笑。

劇場初公開から約30年。
改めて鑑賞してみると色々と発見があるものですね。特にノーラン監督の『ダークナイト』三部作、ザック・スナイダー監督版『バットマン』、そして『レゴバットマン』を観ていますからね。その違いに頷き、驚き、笑えたりするのです。

そして、現代の《バットマン》の方向性。
それが間違っていないことも改めて認識しました。やはり《バットマン》は“闇の騎士”。軽薄なジョークよりも、鈍重で実直な心意気が似合うヒーローなのです。

だから、正直なところ。
ティム・バートン監督のブラックジョークとは相性が悪いと思いました。何しろ《バットマン》よりも《ジョーカー》の方が強烈な印象ですからね。文字どおり《バットマン》は闇に紛れてしまっているのです。

と言うかですね。
どう考えてみても、本作の主人公は《ジョーカー》ですよ。知名度とギャランティを考えたら当然なのですが、オープニングのクレジットでもジャック・ニコルソンが先に来ますし、何よりも彼がノリノリですからね。そりゃあ、マイケル・キートンの《バットマン》では存在感が違います。

それにティム・バートン監督は“異形”が大好きな御方。《ジョーカー》の個性に惹かれるのも当然なのでしょう。本当は彼を主人公にしたかった…のが本音だったりして。

まあ、そんなわけで。
《ジョーカー》の《ジョーカー》による《ジョーカー》のための作品。プリンスの音楽に合わせてお尻を振るジャック・ニコルソンを楽しめるのは本作だけですよ。

それと、技術的にも映像的にも物語的にも。
現代と80年代の温度差を感じる作品でした。これはヒーロー映画の宿命だと思って割り切る必要がありますね。ちなみに『バットマン』シリーズで一番バランスが良いのは『レゴバットマン』だと思います。何しろ、原作はアメコミ。実写よりもデフォルメされた表現の方が似合うのです。

それともうひとつ、余談として。
個人的に一番好きな《バットマン》の造形はベン・アフレック版です。何しろ《バットマン》は露出している“アゴ”の形が重要。彼の“アゴ”は見事なまでにイメージにピッタリなのです。だから、現行のDCシリーズで“降板”の話が聴こえてきたのは残念な限り。彼の“才能”に匹敵する役者さんが継いでくれることを祈るだけです。

To be continued… →→→ 『バットマン・リターンズ』
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