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東京の孤独の3104のレビュー・感想・評価

東京の孤独(1959年製作の映画)
3.7
のちの「渡り鳥シリーズ」を思わせる、アキラとジョーの対決構造。日活が送る、野球を題材にした軽やかな青春映画。

優勝が至上命令の東京ディッパーズの入団テストで出会った2人。アキラが投手、ジョーが打者。様々ないきさつから両者は宿敵同士のチームに入団する。新人王を目指す2人のライバル関係をさらに際立たせるのがディッパーズ監督大貫の妹、芦川いづみ。彼女とチームの優勝をかけた「戦い」の結末は・・?

まだどこか初々しいアキラとすでにふてぶてしくもあるジョーもそれぞれ魅力的だが、何より可憐で気丈な芦川いづみに目を奪われる。CA姿も似合う、フワッっとしたロングスカートも似合う。童顔だが決してキャピキャピではなく、抑制が利き品の良さも感じさせる佇まいが素敵だ(彼女と対を成すかのような清水まゆみの“現実感”が笑いを引き起こす要因に)。

彼ら彼女らをとりまく大人の事情。
監督役の大坂志郎とそれを支える妻役の月丘夢路。
球団の権力闘争の裏で動く新聞記者西村晃。
特に序盤は野球のシーンより人物間の“綱引き”がメイン。
後に活きてくるのだが、やや展開が遅いところもあり。

シーズンが開幕しアキラとジョーが活躍しだすに合わせ、映画はテンポを増し転がり出す。野球のシーンはところどころ非現実で整合感に欠けるところもある(そもそも野球経験のない素人がそこまで活躍できるか?というのはさておき。お話ですから)がおおむねきちんと、そして躍動的に描かれている。
当時の球場や観客の様子、選手のプレースタイルなどが垣間見えるかのよう。

爽やかなラスト(芦川いづみと砂浜を駆けてみたい)に至るまで、全体的に明るい作品だがなぜ「孤独」とタイトルにあるのか。これは大坂志郎演じる大貫監督の心中・境遇「プロ野球の監督は孤独だ」を指しているのであろう。彼の抑えた演技もまたそれにふさわしいものとなっている。

撮りも撮ったり野球映画。
なんと申しましょうか、肩の力を抜いて楽しめる映画なのである。
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