いの

13回の新月のある年にのいののレビュー・感想・評価

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)
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もうこの映画の感想を書きたくない(書けない)自分と、それでも書きたい自分がいて、それは自我の問題かもしれないけど、自分の拙い言葉や思考の問題でもあって、自分の言葉や思考では この映画のこと書くと全然違うものになっちゃうと思うと、途方に暮れてしまいたくなる。

とてもたくさんの言葉がこの映画では語られるけど、たくさんの言葉でもってしても語り得ないところ(思い)に、この映画の本質があるような気がする(それはまだ私にとっては予感に過ぎない)。たくさんの言葉のその先の沈黙とかため息とか、そういうものに。圧巻の屠畜の場面に、洪水or心からの叫びのように重なる言葉は、大量の鮮血や屠られた死体とともに沈黙に帰す。

印象に残る場面はたくさんあるけれど、そのなかでも今の時点でいちばん私に問いかけてきたのは、広々としたビル(廃ビルかのような空間)で、いままさに自殺しようとしている男性と、主人公エルヴィラが会話するところからの一連の場面。私の心のなかにある考えを口に出したり書いてしまったりしたら、世間の皆様から蔑まれたり疎んじられたりするかもしれない、というものもアタシのなかにはある。あの場面は、アタシのそういう部分に、ド直球で何かを投げ込んできた。まだ理解できないところもアタシにはたくさんあるけれど、あの場面ひとつとっただけでももうじゅうぶんに揺さぶられている。
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