悪魔の毒々クチビル

ティーン・エージェントの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ティーン・エージェント(1991年製作の映画)
3.7
「スペイン語履修しておけば良かった」

単位が足りず卒業保留になってしまった男子高校生がフランス語クラスの単位獲得の為にパリに研修に行くも、そこで同姓同名のスパイと間違われてしまうお話。


91年製作のアメリカのアクションコメディ。
日本では当時ビデオスルーになったままでDVD化すらされていませんが、U-NEXTやアマゾンプライムで配信はされています。
監督はウィリアム・ディア。全く知らないな~と思ってフィルモグラフィーを観たら「チャンス・ボール」の監督だったのか。懐かしいなぁ。

U-NEXTの紹介文で何となく面白そうだなと思って観ましたが、程よくアクションしたり程よく緩かったり割と派手に爆発したりと中々楽しめる内容でした。

敵も味方も同姓同名だからって只の落第生を優秀なスパイだと信じ込んじゃうアホなんだけど、男って所以外は一切詳細不明な存在だったので案外そんなものかもしれないね。
因みに本物の方は敵の雇った暗殺者に瞬殺されます。

そんな凄腕スパイとたまたま同じ名前のマイケル・コーベン君、最初はトントン拍子で要人護衛任務の説明されて「いや、あの人違いなんですよ」と焦るもめっちゃ格好良いボンドカーを用意されて態度を一変、ノリノリでスパイを装います。
刺客に追われても奇跡的に発動させたハイテク装備のお陰で何とかなっちゃうのも、こう言う作風ならではの緩さですね。
彼を演じたリチャード・グリエコはその後はASYLUM版「ソー」でロキを演じたりと、そっち系の作品にチラホラ出ているようで。

リンダ・ハントが鞭使いの殺し屋という、意外な配役で出演していましたがこれまたこういうコメディ色の強いアクションだと妙に生き生きしていまして、良かったです。
パッと見ちっちゃいおばちゃんなんだけど、何故か凄腕スパイも殺せちゃう腕利きなんですよね。
この人は「キンダカートン・コップ」の園長先生役で初めて知ったので、たまには悪役も良いなぁと。後半あんま出番ないのが残念でした。
その相棒が片手がサイボーグ的な義手を着けている無口なおじさんなのも含め、スパイ映画にありそうな要素をコミカルにオマージュしたっぽい部分がいくつかありました。

序盤、空港で主人公のお母さんと指令部各々がマイケル宛に掛けてきた電話を二人のマイケルが逆に取っちゃうくだりとか、勝手に「教師」を暗号名と捕らえられて無関係なマイケルのフランス語の先生や生徒達まで巻き込まれたりと、この手の設定ならではの展開が面白かったです。

マイケル君が滞在中のホテルにロケランぶちこまれ死体を目の当たりにして、流石に「もう無理」と逃げ出そうとするものの今回の任務の黒幕に父を殺された美女に出会ったり何故か先生達が人質に取られた事を知って、今までみたいに適当に生きるのは止めたと奮闘する流れもアリ。
ただもうちょいスパイ装備を活用するかと思いきや、ガム爆弾と壁歩きシューズくらいで敵はまさかのマシンガンで仕留めるっていうね。
普通の高校生が終盤急に銃撃戦で何人もの人間をさらっと殺しまくっていたんだけど、こういうツッコミ所がないと逆に成り立たないプロットと言っても過言ではないですからね。まぁ良しとしますか。
先生も殺し屋にビンタされたりと可哀想でしたが、ラストは何か覚醒してランボーみたいに頭に何か巻いていました。誰も殺してはないけど。

適当さで乗り切る丁度良い規模の作品でした。
尺が90分にも満たない上にテンポがめっちゃ良いのも観やすい要因でしたね。
配信で気軽に視聴出来るとは言え、DVD化もされていないのは勿体ない気がします。