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蝿男の呪いのmasatのレビュー・感想・評価

蝿男の呪い(1965年製作の映画)
2.5
ばりぃーん!
と内側から割れた窓ガラスがカメラに向かって飛び交い、直撃する。その割れた窓の奥から、ヌーッと女が顔を出す。下着姿のその女は、窓から乗り出し、飛び降り、森の夜道を駆けて行く。
精神病院から脱走した女が、夜道をひたすら走る。通り掛かった車に拾われるが、その男は科学者らしい・・・

一体何が始まるのだろうか!?と言う絶妙な走り出しをキメる本作は、なんともおぞましく、“蝿男”どころではない、“蝿男”そっちのけで、異常な実験の痕跡を見せ始める。
1965年当時としては、かなり異様で、観客は引いたことだろう。あまり語り継がれていないだけのことはある。
気狂い沙汰の実験の失敗、その残骸が、異様な奇形物体としてゾロゾロ登場する。映像、フレームがなかなか美しいのが、また煽ってくる。

ラストは勿論、崩壊の最期が待っているのだが、最もワクワクした“精神病院から脱走した女”と言う設定が、最後まで効いて来なく、勿体ない!が、印象に残る異様さは溢れている。

クローネンバーグのハリウッド傑作『ザ・フライ』(86)の続編として制作された駄作『ザ・フライ2』(88)。前作で力量発揮し、監督に抜擢された特殊メイク・アーティスト、クリス・ウェイラスの監督デビュー作であるが、その力量不足は目を覆うが、何故か“おぞましさ”だけは印象に残る。何とも言えないエゲツナさがあった。異形の物体を必要に映すラストカットなど、醜さへの執着は感じなくもない。

今回解ったのは、クリス・ウェイラスが目指したのは、3本ある“蝿男”の中で、特に異色な(いや無視された)本作を目指した、と言う事。そのおぞましさへの執着を引き継いだかの様だった。故に作家生命は息の根を止められる結果となった。
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