YasujiOshiba

裂けた鉤十字/ローマの最も長い一日のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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日本版DVD。24-47。セリフはイタリア語で日本語字幕。イタリア語の原題は「Rappresaglia」(報復)。1944年に起きたパルチザンがドイツ軍に対して起こした「ラセッラ通りテロ」事件と、それにたいするドイツ側の「報復」を描く。それが「アルデアティーネの虐殺」と呼ばれるもの。

以下備忘のために

- マルチェッロ・マストロヤンニとリチャード・バートンがみごと。

- バートンの演じたゲシュタポ長官カプラーは、公開の時点では終身刑で服役中だったが、その後脱獄、ドイツで亡くなっている。

- 音楽はエンニオ・モリコーネ。

- 1人殺されたら10人を殺す。数に対する数の報復。恐ろしいのは、その数をそろえるために頭数を準備すること。具体的には名前を揃えること。名前は死刑や終身刑の囚人、政治犯、そしてユダヤ人。犯人をとらえるのではない。ただ殺された数にみあう数を殺すことが報復なのだ。ひとりひとりは、だから罪がない。それでもそのひとりの名前を3回考え直すというセリフが恐ろしい。

- 報復が数ならば、報復する者はマシンにならねばならない。一度に300人を処刑するときの、技術的な処置をどうするか。どうやって殺すのか。どこで、どうやって遺体を処理するのか。どのように処刑するのか。すべてを考えなければならない。

 ここに見るのは、人が人を殺す技術。数を処理するように殺すことを、いかに可能にするのか。殺す側のメンタルを含めて、冷徹に責務を遂行するのがリチャード・バートン演じるカプラー。悪の権化ではない。優秀な官僚だということ。そこが怖い。

 アルデアティーネの虐殺は、ドイツにとっては正当な報復措置(rappresaglia)だというも理屈を、最後まで実行するのがカプラー。命じる方は楽で良い。1人殺されたら10人殺し返せ。 十倍返しというのはちょとひどいのだけど、数は感情で決まってしまう。決まってしまえば、あとは実行するだけ。その実行力のおそろしさ。
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