半兵衛

ブローニュの森の貴婦人たちの半兵衛のレビュー・感想・評価

3.0
ブレッソンの作品にしては普通のメロドラマだけれど、好きだった男と惰性で別れた女性が壮絶な復讐方法で報復しようとする点が他のドラマにはない面白さがあった。

ブレッソン監督の演出はまだ手探りの状態という感じでプロの役者を起用しているし後年の厳密な演出スタイルではないが、随所に音で登場人物の感情を表現する演出やドア越しで部屋のドラマを撮ってドラマに感情の熱を入れないようにしていく低体温の語り口など後年の監督の息吹きを感じさせる。特に中盤好きな男にメモを渡そうとするも相手に気づかれず自分の手元に戻ってくる距離の演出にはハッとさせられた。

恋人とのひどい別れ方で深く傷つき感情がなくなってしまったようなヒロインのエレーヌを演じるマリア・カザレスの鬼気迫る演技が凄い。

終盤のヒロインの一言から夫婦が絶望に落とされる結婚式のシーンが圧巻。でもそこからいきなりどんでん返しのようなオチになるラストにびっくり、そんな展開なのに役者は無表情。

ちなみにブローニュの森がどんな場所か知っていると、タイトルの付け方がかなりシニカルであることに気づかされるはず。
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