こたつむり

シルミド/SILMIDOのこたつむりのレビュー・感想・評価

シルミド/SILMIDO(2003年製作の映画)
3.3
♪ 駄目な映画を盛り上げるために
  簡単に命が捨てられていく

韓国で秘密裏に進められた金日成暗殺計画。
それは、素人目に見ても成功率が低そうな作戦でした。だから、その作戦に従事するのは、死刑囚を集めた《684部隊》。いわゆる“使い捨て”の部隊です。

この発想はスゴイですね。
そりゃあ、政府が長年に亘って“ひた隠し”にするのも解ります。人権意識が薄い時代だとしても、発覚したら非難されていたでしょう。

だけど《684部隊》に共感できないのも事実。
何しろ、半強制的に従事させられたのは、眉を顰めるような犯罪に手を染めた結果。彼らが「国のため」と口にしても、報酬(名誉と自由と金銭)が目当てなのはバレバレなのです。

しかも、飄々とした笑顔の隊員が、自身の欲望を“無辜の市民”にぶつける場面もありますからね。これはダメでしょう。キッチリと“けじめ”をつけたとしても、擁護できる部分は皆無です。

そして、物語の端々から透けて見える政府批判。確かに隠蔽された事実を暴いたことは評価できますが、実際の《684部隊》は死刑囚だけではなく志願兵もいたとか。なるほど。設定から恣意的なのですね。

そう考えると少年マンガのような筆致も。
泣かせようとするバタ臭いメロディも。
どれもこれもが“プロパガンダ”を隠すための装置。鼻持ちならない演出に感じたのは、勘違いではなかったのです。

結局のところ、この事実を隠した当時の政府も。それを批判するために本作を仕上げた製作陣も。自分の都合のために“事実を捻じ曲げている”わけで。うん。“根っこ”は同じなのですね。

まあ、そんなわけで。
陰謀論の半分は本当、半分は嘘。
正確な比率は判りませんが、そう考えた方が良いと思いますので…「真実」という“本物っぽいウソ”を見極める教材として鑑賞することをオススメします。

…その立ち位置で捉えると、この作品ってホラーですな。
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