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雨にぬれた舗道のzhenli13のレビュー・感想・評価

雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)
4.0
普通に生きられなかった女性がどんどん怪物化していく。普通の人づきあいができない者にとって、これほど痛いものがあるだろうか…ある意味涙なしには観られないよ。それがまた滅法出来のよい作品となっているのだから!

化粧気がない広いおでこのネオテニーなサンディ・デニスがブラインドと窓に映る雨影をその顔貌に投影させるショットが繰り返され、その目はいつも泣き腫らしたようにも見える。鏡越しや分厚く歪んだガラス越しのショットや、フェイドアウトならぬピントアウトでのトランジションも多用されるので不穏な印象がいや増す。

『イメージズ』では誰か(幻影)がいることの恐怖であったのが、本作は誰もいないこと(誰でもいいわけではない)のさみしさが増幅し怪物化する過程が描かれる。
保守的な上流階級で母親の抑圧下にあったであろう彼女が両親の亡き後も親の友人であった老人の相手ばかりさせられるという環境で、年齢なりの社交や恋愛を全く経験してこなかったことが生んだ顛末となり、彼女自身の特性によるものではないところがまたつらい。

作中でサンディ・デニスの台詞にもあるように、ずっと一人であれば、さみしいとも思わないのだ。
誰かがいる愉しさや温かさを知ることで、はじめて一人でいることがさみしく孤独だと気づいてしまう。つらい。
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