うえびん

クラウド アトラスのうえびんのレビュー・感想・評価

クラウド アトラス(2012年製作の映画)
3.3
人類の絶望と希望

2012年 アメリカ作品

時空を超えた気宇壮大な6つのストーリー

①1849年、太平洋諸島。アフリカを航海中に寄生虫の病にかかってしまった弁護士アダム・ユーイングとモリオリ族の奴隷オトゥアとの出会いとその後。
②1936年、ケンブリッジ。ゲイの作曲家、ロバート・フロビッシャーと老作曲家ヴィヴィアン・エアーズとの共作曲にまつわる出来事。
③1973年、サンフランシスコ。ゴシップ記者のルイサ・レイが、偶然の事故で預かった重要な文書。その後に巻き起こる出来事。
④2012年、ロンドン。老編集者ティモシー・キャベンディシュは、ある事件をきっかけに老人ホームに入れられてしまう。そこからの脱出劇。
⑤2144年、ネオ・ソウル。給仕用クローンのソンミ451は、ある事件をきっかけに、チャン・ヘジュと共に逃亡、その後、社会の革命を図る。
⑥2321年、核に汚染された地球のどこか。ヴァリーズマン・ザックリーと、地球を救うために遠い星から来たネロニ厶とのあれこれ。

それぞれの時代に合わせた舞台設定、記憶される過去と想像された未来。400年以上の時と東奔西走する映像とドラマ展開は面白かった。ただ6つのストーリーのつながりは、想像と思考が追いつかず、置いてけぼりにされた感じが残った。

古今東西、人間社会に共通する問題。①では奴隷制、②では性的マイノリティ、③では巨大企業の不正、④では高齢化社会、⑤ではクローン人間、⑥では人間同士の殺し合いが描かれる。ロシアのソルジェニーツィンやアメリカのカルロス・カスタネダの話が出てきたので、現代社会に対する監督のメッセージを読み取ろうと考えてみたけど解らなかった。

作中のいくつかのセリフが印象に残った。
「この世には序列がある。序列は守られなければいけない」
「悪魔でなく文明を崩壊させたのはだれ?人間の果てしない欲望だ」
弱肉強食、搾取される側の人間と搾取する側の人間、2極対立は永遠に無くならないのだろうか。と考えると絶望的になる。

だけど、人類がここまで繁栄と衰亡を繰り返してこられたのは、希望をもってあきらめない人がいたからだろう。
「あらゆる垣根は幻想。乗り越えようと思えば乗り越えられる」
「すべての罪が、あらゆる善意が、未来をつくる」

個人の信仰、死と輪廻転生、社会の崩壊と再生、人間と社会と自然、あらゆるものに示唆が込められているんだろうけれど、限られた時間と限られた映像空間に押し込めるには、ちょっと無理があったんじゃないかと思った。
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